「キャシアン・アンドー」第10話「道はひとつ」レビュー/トリビアチェックポイント【ネタバレ注意】

キャシアン・アンドー レビュー/トリビア
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 Disney+ (ディズニープラス)で配信中の「キャシアン・アンドー」第10話「道はひとつ」レビュー/トリビアチェックポイントです。

 この記事では、「キャシアン・アンドー」第10話「道はひとつ」のレビュー(感想・考察)やトリビアの解説といった、このエピソードをより深く知るためのテキストを綴っています。

 この記事はネタバレがございますので、「キャシアン・アンドー」第10話「道はひとつ」の本編鑑賞後にご覧ください。

 「キャシアン・アンドー」シーズン1の他のエピソードは、以下のカテゴリーからご参照ください。

キャシアン・アンドー レビュー/トリビア

ディズニープラス(Disney+)で独占配信の『スター・ウォーズ』実写テレビドラマシリーズ「キャシアン・アンドー」のストーリー、レビュー、隠れ要素(イースターエッグ)やオマージュなどのトリビアの解説といった、エピソードをより深く知るためのテキストをまとめたエピソードガイドです。

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「キャシアン・アンドー」第10話「道はひとつ」レビュー

「服従して死ぬくらいなら、戦って死ぬ」

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 これは人間の自由と、それを求める意思への賛歌だ。

 暴力で脅されて人間性を奪われ、規則に従わされ、安価な労働力として死ぬまで働かされるナーキーナ5の強制労働施設からの脱出劇が繰り広げられる第10話「道はひとつ」は、自由を求める人々が立ち上がることを通して、人間本来の自由意志を呼び覚ますような革命の物語が描かれる。

 前話の第9話「誰も聞いちゃいない!」までに、帝国の非道さを目の当たりにし、有無を言わせぬ支配を受けて抑圧されてきた囚人たちを見てきたことで、彼らが自らの手で自由を取り戻す姿には胸が熱くなるカタルシスが得られる!

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 ウラフの死によって知られることとなった、すべてのシフトが終わってもナーキーナ5から出ることが出来なくなったという事実は、入れ替わりの新人が入るタイミングでの脱出が最後のチャンスとキャシアン・アンドーに決意させ、さらにこれまで体制に迎合していたユニット52Dの監督係であるキノ・ロイにも、服従して生きるだけの人生ではなく、死んだ気になって自由を取り戻す戦いへの覚悟を決めさせる。

 圧政を敷く帝国軍に対して、自由のために戦う反乱軍が立ち向かう。これが1977年に公開された『スター・ウォーズ』のストーリーだ。自由のための戦いは形を変えながらシリーズを通して描かれており、『スター・ウォーズ』のエッセンスのひとつである。

 さらに、第8話「ナーキーナ・ファイブ」のレビューで記したように、ナーキーナ5で帝国が作り上げた強制労働施設は、個性を剥奪された人々が管理社会に置かれているジョージ・ルーカスの商業映画デビュー作『THX-1138』を連想させる。

 つまり、商業映画デビュー作、シリーズ第1作という2本のジョージ・ルーカスの初期の作品の要素が感じられるのだ。

 管理社会からの脱出を試みるTHX-1138は、思えば孤独な戦いをしていた。しかし、ナーキーナ5では囚人が一丸となって立ち上がり、自由を求める。これまでのチーム制での労働により、集団としての力も抜群だ。

 脱出作戦は、臨場感のある手持ちカメラでの撮影と、緊迫感を煽るスピーディーな編集でありながら、視聴者に見て欲しい被写体をきちんと見せているカメラワークとカット割りとなっており、高さもある立体的な舞台でも何が起きているかわかりやすく、スリリングさを維持し続けるアクションシーンとなっている。

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 そして、彼らを率いるキノ・ロイがリーダーシップを発揮。施設のコントロールを奪い、「天の声」の放送で囚人たちに蜂起を呼びかける様は、すべての自由を求める人々の代弁者のようだ。

 これまでの人類の歴史や物語の中で自由を求める戦いが数多あったように、この声には普遍的なものが含まれている。本来は当然に持っていた権利が奪われ、搾取された者たちの怒りと、その立場に甘んじることなく尊厳のために立ち上がる勇気だ。

 その声は、あらゆる不自由がそばにある人々を勇気付けてくれるはずだ。

 自由を奪うには鉄格子や鎖は必ずしも必要ではない。身の回りにも、目に見えない不自由はないだろうか?一見すると牢になっていないナーキーナ5の施設が、目に見えない電気が流れる床で覆われているように。

影のアジテーター、キャシアン・アンドー

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 そんな高揚させられる演説を行ったキノ・ロイに、進むべき道はひとつしかないことを気付かせたのはキャシアン・アンドーだ。キノ・ロイは、キャシアン・アンドーの叫びも仲間たちにそのまま伝えている。

 キャシアン・アンドーこそが、影のアジテーターなのだ。

 思えば『ローグ・ワン』でもジン・アーソを信じて仲間を巻き込み、部隊を組成出来たのはキャシアン・アンドーの力だった。自らが前面に立つわけではないが、影響力が強い者と周囲を巻き込んで実行の道へ進ませることはキャシアン・アンドーの大きな能力なのだろう。

 多くの囚人の心を動かす熱い演説とともに作戦に成功した当のキノ・ロイが、肩透かしな理由で施設の外に出られないという展開も予期せぬ意外性がある。

 海上の施設であり、出口からの囚人の輸送手段がないことはわかっていたはずだ。キノ・ロイはまさに、「服従して死ぬくらいなら、戦って死ぬ」ことを選び、自己犠牲とともにそれを体現したのだろう。

 キノ・ロイを演じるアンディ・サーキスは、『スター・ウォーズ』シリーズでは最高指導者スノーク役で知られているが、純粋な悪であるスノークとは異なる多面性を持つ役柄を熱演。このナーキーナ5のパートに、なくてはならないキャラクターを作り上げたと言える。

銀河の平和か、家族か。モン・モスマに付きつけられる究極の選択

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 ナーキーナ5での騒乱の一方、コルサントでは静かに今後を揺るがす会話がなされていた。

 まず、モン・モスマの元にはテイ・コルマの紹介で融資を依頼出来るダヴォ・スカルダンが訪れた。

 貸しを作らないように、モン・モスマは手数料を支払わせて欲しいと言うが、手数料を取らない代わりにダヴォ・スカルダンは14歳の息子を連れての再訪を依頼する。これを聞いて動揺するモン・モスマ。

 第8話「ナーキーナ・ファイブ」でのモン・モスマの邸宅のパーティーの会話から、モン・モスマとその夫のペリン・ファーサは15歳で結婚しており、それが彼らシャンドリランの伝統なのだということがわかる。

 ダヴォ・スカルダンはすぐの婚約ではないと言うが、年ごろだから紹介させたいというのは結婚の相手としても視野に入れてのことだろう。

 ただでさえ、モン・モスマは娘のリーダ・モスマとは不仲だ。これに加えて、自身の政治的な信条によって結婚相手を押し付けられたとなれば、親子関係は悪化するだろう。何より、銀河の平和のためとはいえ、金のために子どもを結婚させる政略結婚のような行為は不快なはずだ。

 銀河中で苦しむ多くの人々の救済のためか、ただ一人の娘のためか。モン・モスマは究極の選択を強いられたのだ。

ISB内にスパイが!非情なルーセン・レイエルが払った犠牲とは

 さらに、ルーセン・レイエルはコルサントの暗闇の中でISB(帝国保安局)のロニ・ヤングと密談。

 ヴェル・サーサがモン・モスマの従姉妹であったことが明かされた第9話「誰も聞いちゃいない!」に続き、第10話「道はひとつ」では、ロニ・ヤングがISBに潜伏した反乱側のスパイだというサプライズが飛び出した。

 変装し、ターボリフトの中で隠されたイヤフォンを付けて、生まれた子どもについての脅しを入れられるあたりはまさにスパイ・スリラーの雰囲気だ。ターボリフト内でロニ・ヤングは緑がかった照明に照らされ、不安を煽る演出となっている。

 娘が生まれたことで、ISBと6年かけて尽力したスパイ活動から足を洗いたいというロニ・ヤングに対して、ルーセン・レイエルは逃げられないと一蹴する。これまでに犠牲にしてきたものを挙げ、すべてを投げ打って15年前から誰にも賞賛されることのない反乱に身を捧げているというルーセン・レイエル。

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 人間性を失った組織と戦い続けたことで、自身も人間性を失ったかのような鬼気迫り、非情な演説をステラン・スカルスガルドが熱演している。

 ルーセン・レイエルはもちろん、自身がアルダーニの襲撃を指揮したことをロニ・ヤングに伝えない。必要のないことは言わず、味方から欺いていく。

 ソウ・ゲレラには、スペルハウスの発電所襲撃を狙うアント・クリーガーと会うように言っていたルーセン・レイエルだが、ISBがアント・クリーガー派のパイロットを捕えてその計画を認識したと聞いて、切り捨てを図っているようだ。

 デドラ・ミーロによるフェリックスの事件と「アクシス」、アルダーニとの接点を探る捜査について聞いても好都合なのだという。核心に迫り、自身に危険が及んでいるデドラ・ミーロの捜査がなぜ好都合なのか。

 どこまでが虚偽なのか判別しないところだが、ルーセン・レイエルのこの余裕の理由は知りたいところだ。

 『THX-1138』で、自由を求めて管理社会から脱出したTHX-1138は、夕陽が沈む荒野を歩んだ。ナーキーナ5から脱出したキャシアン・アンドーとメルシは、夜の荒野を疾走していく。

 夜明けはまだのようだ。

「キャシアン・アンドー」第10話「道はひとつ」トリビアチェックポイント

GPE 7000

 デドラ・ミーロが読み上げる、カフリーン救助隊によるアント・クリーガー派のパイロットが乗っていた宇宙船にの報告にて、宇宙船はGPE 7000だとある。

 GPEはギャラクティック・パワー・エンジニアリングのことで、『エピソード1/ファントム・メナス』に登場したマホーニックのポッドレーサーの製造元だ。

ナブーの頭飾り

 ルーセン・レイエルのアンティーク・ギャラリーショップにてルーセン・レイエルとクレヤ・マーキが会話するシーンでは、『エピソード2/クローンの攻撃』でパドメ・アミダラがコルサントからナブーへ移動する際に着用していた頭飾りが店内に置いてある。

スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ グッズ

 このナブーの頭飾りは、ディズニーランドのテーマランド「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」のショップ「ドク=オンダーのデン・オブ・アンティーク」でも販売されている。

DH-17 ブラスター・ピストル

 ナーキーナ5の看守たちが使用しているブラスターは、DH-17 ブラスター・ピストルだ。

 DH-17 ブラスター・ピストルは、『エピソード4/新たなる希望』で反乱軍兵員が使用していたほか、デス・スター兵員も使用していた。

監獄司令センターの操作盤

 ナーキーナ5の監獄司令センターの操作盤は、『エピソード4/新たなる希望』に登場したデス・スター監房ブロックのワークステーションと同様の形状で、ナーキーナ5の内装に合わせて白い配色となっている。

コルサント下層レベルのロケ地

ルーセン・レイエルとロニ・ヤングが会ったコルサントの下層レベルのロケ地は、イギリスのチェルムスフォードにあるハニングフィールド浄水場で撮影された。

 「キャシアン・アンドー」はDisney+ (ディズニープラス)にて独占配信中。

 参考:StarWars.com

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2005年より「スター・ウォーズ ウェブログ」を運営。「『スター・ウォーズ』究極のカルトクイズ Wikia Qwizards<ウィキア・クイザード>」世界大会優勝者。ディズニープラス公式アプリ「Disney DX」のオリジナル動画や記事など、様々な出演/執筆も行っています。2010年、『ファンボーイズ』日本公開を目指す会を主宰しました。

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