2017年9月28日(木)、Star Wars公式Twitterとinstagramに投稿された『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の新キャラクター、ポーグの群れの写真。この大小様々なポーグたちは、すべてナスで作られた彫刻なのです!
Porgs make for some pretty wizard eggplants by @minayoshi. pic.twitter.com/mNDvX1Y4ft
— Star Wars (@starwars) 2017年9月27日
こちらのナスのポーグの作者はなんと、日本人の『スター・ウォーズ』ファンであるOkiさん。全世界のファンが注目する公式アカウントで、ご自身の作品が紹介されるという快挙を遂げられました!
Okiさんは、大阪の「寿司ビストロ 美奈吉」のご主人である寿司職人で、お店はファン仲間の間では「ジェダイ寿司」として知られています。
なぜならOkiさんは、『スター・ウォーズ』ファンコミュニティ「ジェダイオーダー・ジャパン」にて日夜ライトセーバーの殺陣を研究・修練されている、スシのマスターにしてジェダイマスターという、まさに「ジェダイ寿司」の異名がぴったりな方なんです!
「ジェダイオーダー・ジャパン」は、毎年初夏に開催される「神戸まつり」にて『スター・ウォーズ』キャラクターのコスチュームに身を包み、ライトセーバーでの演舞をパレードにて披露しており、Okiさんもオビ=ワン・ケノービの衣装で毎回参加。
そしてファン仲間がお店に集う日には、今度はOkiさんは野菜の彫刻であるベジタブルカービングによって、宴の席に『スター・ウォーズ』の世界を登場させているのです!
このベジタブルカービングは日本の包丁技術である「むきもの」によるもので、Okiさんは野菜アート職人として、20年以上前からあらゆる野菜を用いて様々な作品を作り続けてきました。
近年は、「スター・ウォーズ セレブレーション」のファンブースに「ジェダイオーダー・ジャパン」として出展され、世界中のファンに『スター・ウォーズ』ベジタブルカービング作品を紹介。
会場内で開催された「スター・ウォーズ ユニバーシティ」と題したイベントでは、ベジタブルカービングを実演しながら英語でプレゼンテーションし、日本の和食文化も含めて集まったファンに講義もされています。まさにマスターだ…!
「スター・ウォーズ セレブレーション オーランド2017」では、『スター・ウォーズ』公式Youtube番組「The StarWars Show」の生配信にて、ベジタブルカービングを実演。日本伝統の技で『スター・ウォーズ』を表現する様子を、全世界に発信されていました。
私がOkiさんとお会いしたのは、2008年の「スター・ウォーズ セレブレーションジャパン」と、その直後のNHK BSの番組「BS熱中夜話」の出演でご一緒した時でした。実際にベジタブルカービングの作品をスタジオで拝見し、はじめて見る野菜で作られた彫刻に驚いたものです…
Star Wars公式SNSで作品が紹介されたことを機に、日本の多くの方々にOkiさんとベジタブルカービングの世界を知って頂きたいと思い、今回のナスのポーグの制作の裏側、ベジタブルカービングの魅力、そして世界のファンとの交流のエピソードについて、Okiさんにお話を伺いました!
今も続く、はじめて『スター・ウォーズ』 野菜アートを作った日の感動体験
―― ベジタブルカービングを始めたきっかけを教えてください。また、始められたのは何年前になりますか?
Okiさん ベジタブルカービング自体を始めたのは1996年です。当時一年間住んでいたカナダ・トロントの調理場で初めて野菜の彫刻を見て以来感動して、帰国後自分で少しずつ練習するようになりました。でもその頃はとても人様に見せることができるような作品ではなかったです。(笑)
―― 最初から『スター・ウォーズ』を題材にされていたのでしょうか?
Okiさん 『スター・ウォーズ』カービングは、2005年の『エピソード3/シスの復讐』公開時に『スター・ウォーズ』好き仲間の「ジェダイオーダー・ジャパン」の皆さんと出会い、お店に遊びに来てくださったのがきっかけでつくり始めました。
SW好きな友達がお店に来てくれて、「これはなにか作ってお返ししなければ!」と大慌てで冷蔵庫の中を探したらニンジンがあったので、R2-D2を作りました。
その時のみんなの爆発的な反応が本当にうれしくて…!今もその日の続きを作っている気がします。ですので、僕の『スター・ウォーズ』カービングが始まったのは、友人達のおかげなのです。
限られた情報で作ったナスのポーグ
―― 今も『スター・ウォーズ』ファン仲間が喜んでくれた、その日の続きを作っている感じとは…あぁ、なんかいきなりいい話でジーンとします…
今回、ナスのポーグを制作する上での参考資料は『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のプロモーション映像の1カットのみかと思います。制作にあたっては、ポーグのグッズなども参考にされたのでしょうか?
Okiさん 実はポーグを製作/撮影したのはお盆真っただ中の8月15日でした。当時まだグッズ等を観たことがなかったのですが、StarWars.comに「ポーグはルークの島の崖に住んでいて、巣を作り生活し、赤ちゃんポーグはポーグレット(Porglets)と呼ばれる」といった記事を読みましたので、群れ単位で数匹作ろうと思いました。
ポーグの容姿は、プロモーション映像の1カットと、StarWars.comの記事にあったイラストを参考にしました。
―― この作品は、どのようなシーンのポーグをイメージされたのでしょうか?
Okiさん 映画の中盤頃、ついにルークの居場所を突き止めたファースト・オーダーの戦闘機が大挙して島に迫りくるのを発見したポーグが岩陰から出てきて心配そうにその様子を伺っている…というシーンを予想し表現しました。結果ちょっと悲しげな表情になっています。
ところでポーグ…もっと沢山いるのか? もしかして『エピソード6/ジェダイの帰還』のイウォークたちのように戦う?皆さんと同じかと思いますが、想像し始めたらワクワクが止まりませんね!
―― おお!そうしたシチュエーションを想定されて、このポーグたちの表情だったのですね。このポーグの口のオレンジの部分はどのような素材を使われているのでしょうか?
Okiさん 細かいところまで見てくださり、ありがとうございます!オレンジの部分はニンジンです。
ポーグが住む「あの島」を撮影した場所は
―― ニンジンなんですね!撮影場所は、お家の近くですか?
Okiさん 実は撮影場所を探すことにかなりの時間を費やしました。
通常は食材なのでお皿の上で撮影するのですが、ルークの住む「島の切り立った崖」のイメージが強く今回はカービング史上初(笑)、初めて屋外の自然の中での撮影にしました。
本当は海辺の岩場があればよかったのですが、近くに海はありませんでした。場所も想像出来なかったのですが、明け方4時半頃に家を出て、車で30分ほど走った山へ行きました。流れが穏やかで、子供の頃遊んだような川辺を探索して撮影出来るところを探しましたが、ちょうどよい場所がなく、あせりました。
最終的に、少し家の近くに戻り「これだ!」という大きめの岩を見つけて撮影に至りました。
ナスは一度細工しますと、どんどん色が変わって痛んできますので撮り直しは出来ません。その日はちょうど、お盆明けに台風が上陸した日で、撮影後は土砂降りでした…、なんとかギリギリ間に合ったのもいい思い出です。
厳選!野菜アートの素材選び
―― 今回の作品では、大小様々なポーグを制作されており、またナスの形状がポーグにぴったりに見えます。形や大きさがイメージに合う野菜を探す素材選びは、やはり苦労されますか?
Okiさん ありがとうございます!大変うれしいご質問です!
私は、ベジタブルカービングに一番大事なのは「素材選び」だと思っていまして、イメージ通りの野菜が手に入れば、製作過程の半分は成功だと思っています。
ちょうど、撮影時期のお盆の頃は、たくさんの種類のなすびが店頭に並びますが、ポーグの大きさと形状をとにかく第一に考え、素材探しをしました。
『スター・ウォーズ』公式SNSに掲載頂いた写真にはポーグが8匹いるのですが、それぞれ個性をかもし出すべく、
- 地元大阪産の水ナス
- 京都産の丸ナス
- 子供のポーグ用に小ナス
と、様々な種類のナスを使用しました。
もちろん、同じ種類のナスでも形がそれぞれ違いますので、ポーグの写真を片手にナスと見比べながら、最もポーグの体形に近いものを追い求め、最終的には市場やスーパーを数か所回りました。
野菜売り場で写真を片手に長時間うろうろするおっさん…怪しい人物に映ったに違いありませんが、いつもこんな感じです(笑)
―― 『スター・ウォーズ』公式SNSで作品を発表することになった経緯を教えてください。ポーグという題材は、ルーカスフィルム側からのリクエストですか?
Okiさん はい、ポーグはルーカスフィルムからのリクエストでした。私は本当に素晴らしい友達との、たくさんの宝石のような思い出を生んでくれた『スター・ウォーズ』に、恩返しがしたい一心で、ベジタブルカービングや、コスプレ活動などのファン活動をしてきました。
まさかルーカスフィルムにリクエストを頂けるような日が来るとは…本当に光栄な、幸せなことをさせて頂いてると思います。
野菜を彫刻する時の参考資料とは
―― 過去に制作された『スター・ウォーズ』のベジタブルカービングも、毎度細部まで
作り込まれていて造形が素晴らしいです!
Okiさん ありがとうございます!作る対象のキャラやメカの色、形、そして雰囲気に合わせて野菜を選んでいます。
―― メカなどは写真を参考に作ることが多いのでしょうか?または、ご自身が持たれていらっしゃるイメージを元になさる方が多いですか?
Okiさん やはり参考にしますのは、写真ですね。
私の彫刻はいわゆる写真の2Dを、立体彫刻の3Dに変換しながら野菜を少しずつ削っていくイメージです。
ですので、まず作る対象が決まれば、「正面」「横」「後ろ」が映った写真をネットで検索して探します。レアなキャラによっては「横」や「後ろ」の写真が見つからない時もありますので、そういう時はイメージで削ります。
あと、重宝しているのは「スター・ウォーズ キャラクター&クリーチャー」や「スター・ウォーズ アルティメット・ビジュアル・ガイド」などのぶ厚いキャラクター事典です。
こういった本では沢山の武器や小物、レアキャラをページを開きながら次々見ることが 出来ますので、作る対象を決める際の参考になりますし、ネットで検索しても出てこないようなこともたくさん載っていますので、思わぬ発見も多いですね。
ベジタブルカービングにも、「旬」がある!
―― ベジタブルカービングも、野菜の旬が重要なのでしょうか?例えば、今回のナスのポーグも夏の時期だから出来たものであり、映画公開時期である冬には再現出来ないものになりますか?
Okiさん さすが、視点が本当にするどいです!おっしゃる通り、ポーグは夏でなければこんなにいろんなサイズや種類が揃いませんので夏じゃなかったら、おそらくさつまいもや京いもなどで作っていたと思います。
しかし、相対的に彫り物は根菜が向いていますので、秋冬がいいですね。
さつまいもが大きくなり、冬に近くなると私の大好きな京いもが店頭に並びます。京いもは身は真っ白で、さつまいもほど固くないのですが、しっかり角が残りますので、一番好きな素材なのですが、冬場しか出回らないのでこれからの季節がベジタブルカービングには良い季節です!
海外ファンの熱烈な反応!野菜アートを世界に紹介
―― これまでに参加された「スター・ウォーズ セレブレーション」でのブース出展が、ルーカスフィルムはもちろん、海外のファンの注目を集めたことかと思います。海外ファンからの作品への印象的なリアクションやエピソードがありましたら、教えてください。
Okiさん 海外のファンは、特にリアクションが本当に面白いです!!
今年のオーランドでの印象的な方々としては、ブースの前で足を止めて、作品を見ていくにつれ、目を大きく見開いていき隅々まで眺めたあと、おもむろに 「O・M・G!!(オーマイゴッド)」と声をあげられた女性や、写真をたくさん撮ってくださった後に「This is what a Star Wars Celebration for!!!(こういう事のためにセレブレーションがあるのよ!」とおっしゃった女性の方もいらっしゃいました。
また、これは男性たちからで、「You are sick!!(病気かよ!!)」や「Oh nooo! Get out of here!(おいおい、出て行けよw)」というような、いずれも「こんなの見たことない!」、「すげえぇぇ~~」というニュアンスの褒め言葉を頂きました。
とにかく表現がダイナミックで、見てもらう側もこういったコミュニケーションが本当に楽しいんです。
―― 「セレブレーション」でのプレゼンテーションや、英語でのブログ発信、また外国人観光客向けの料理教室なども展開されていますが、英語はどのように習得されたのでしょうか?
Okiさん 私は若い頃、寿司屋の前は洋食調理に携わっていたのですが、その際海外で本場の洋食を勉強したいと思い、そのために働きながら少しずつ英語を勉強したあと、カナダへ料理修行に行きました。
英語で履歴書を書き、飛び込みでレストランやホテルで働いたのですが、その際に生きた英語に触れることが出来たことが、とても良かったと思います。
ただ、文法もひどく、お世辞にもスムーズな英語とは言えませんので…「セレブレーション」のプレゼンの際は、事前に一人で相当練習して、台本を観ないで出来るくらいまでイメージを高めてから望んでいます。
野菜アートで人々を楽しませる、変わらぬ喜び
お店に集まったファンに喜んでもらえたベジタブルカービングが、今や世界中のファンを魅了するほど広まっていったのは、Okiさんの細部に至るまでのこだわりの数々がありました。
世界的な規模へと活動の領域が広がっていっても、野菜を彫刻して『スター・ウォーズ』を表現しファンを楽しませることは、お店ではじめて仲間にニンジンのR2-D2を作ってみせたその日から、何も変わらないのでしょう。その喜びが、Okiさんの情熱の源泉となっていることを実感しました。
ベジタブルカービングを世界に紹介するために様々な取り組みをされており、前述の「セレブレーション」への参加や、英語によるブログ、外国人観光客向けの料理教室に加えて、英語でベジタブルカービングの作り方を紹介する動画をYoutubeで発表するなど、世界へ向けた発信に精力的に、また並々ならぬ努力をされて取り組まれていることも印象的でした。
この「ジェダイ寿司」の技を味わいたい方は、Okiさんの「寿司ビストロ 美奈吉」へ!
寿司ビストロ 美奈吉
[住所]大阪府門真市野里町39―3 京阪本線 大和田駅より徒歩8分
[TEL]072-882-3355
[営業時間]昼:12時~2時 夜:6時~10時頃 定休日:木曜日
関西伝統の押し寿司の技法を取り入れた、美奈吉オリジナルの「寿司ケーキ」という独創的なメニューもあり、こちらは日本全国に発送可能な通販もされていますので、遠方の方も味わえますよ!
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