2月1日(金)、日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」で地上波初放送される『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』。この『ローグ・ワン』には、日本人女優である長井シーナ志保子さんが出演されています。
演じていたのは、ジェダでの戦闘の中でジン・アーソに助けられた女の子、ペンドラ・シリュウ(アイビー・ウォン)の母親であるフイカ・シリュウというキャラクターです(『ローグ・ワン』小説版の表記では「シリュウ」は「シルー」)。
『ローグ・ワン』公開直後、当サイト「スター・ウォーズ ウェブログ」では長井シーナ志保子さんへの独占インタビューをさせて頂きました。
あれから早2年が経とうというこの年末年始、イギリスから日本に帰国されるというご連絡を頂きまして、先日シーナさんとお会いしてきました。
『ローグ・ワン』後の近況、そしてロンドンでお子さんを育てながら、女優として働くことなどについて、お話を伺いました!
『ローグ・ワン』後、コミコンのゲストに
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』へのご出演をきっかけに、長井シーナ志保子さんは近年、世界各地で開催されるコミコンにゲストとして参加されています。ファンへのサインや撮影のほか、イベント会場に取材が来ることも。
2000年代はじめの頃には海外のコミコンで、その語学力を活かしてアンジェリーナ・ジョリーやハル・ベリー、ヒュー・ジャックマンなどに取材してインタビューされていた経験もお持ちということですが、今や取材する側からされる側になりました。
2019年3月に開催される「ロンドンコミコン スプリング」のゲストにもなっており、このコミコンにはチューバッカ役のピーター・メイヒューや、『エピソード1/ファントム・メナス』でシオ・ビブルを演じたオリバー・フォード・デイビスをはじめとした多くの『スター・ウォーズ』キャストのほか、『女王陛下の007』のジョージ・レーゼンビーや、『エルム街の悪夢』のフレディ役のロバート・イングランドなども参加します。
この面々の一員とは、すごい…
『スター・ウォーズ』ファンは「ちょっと特別」
こうしたイベントで会う『スター・ウォーズ』ファンの印象を伺うと、「やっぱり『スター・ウォーズ』のファンの方はちょっと特別」と言います。
シーナさんは映画やドラマだけではなくCMにも出演されており、例えば 現在ロンドンの街中ではびしょ濡れのシーナさんが印象的な、サプリメントの大手ブランドLemliftの広告があらゆるところに掲出されています。
現在この広告はロンドン中にあり、テレビCMも流れているため、街中で声をかけられることもあると言いますが、やはり『スター・ウォーズ』のファンが多いのだそうです!さすがと言うか、なんと言うか…なんかすいません(代わりに謝罪)
また、その他にも現在はLeicaの広告にも出演されているそうです。
「詳しいし、よく見てらっしゃる。でもうれしいですよ」と、『スター・ウォーズ』は普通の映画への出演とは異なることを実感されていました。
『ローグ・ワン』の裏話
『ローグ・ワン』鑑賞中、集中して見られなかった理由
シーナさんが、最初に『スター・ウォーズ』を見たのはアメリカの大学に通っていた時のこと。学校の友達グループはみんな『スター・ウォーズ』ファンだったそうで、シーナさんが「『スター・ウォーズ』を見たことがない」とひとこと言ったら「どういうこと?!連れて行くから見てみなさい!」と大いに驚かれ、アメリカでの強い支持を体感されたそうです。
シーナさんが『ローグ・ワン』で出演されたシーンは、戦場で泣き叫ぶ女の子、ペンドラ・シリュウを助けるジン・アーソの姿を描くことで、ジンは数々の罪状を持つはぐれ者とされながらも、無力な人々を助ける心の持ち主であることが示されており、ジンの性格描写の中でも印象的な場面です。
実は『ローグ・ワン』公開当時、長井シーナ志保子さんは妊娠中でした。
映画館で鑑賞した際は、上記のように自身の出演シーンが銃撃戦だったためか、お腹の中のお子さんが暴れ出し、あまり集中して見られなかったとのこと!お子さんも、『スター・ウォーズ』に出演したお母さんを応援したのかも知れませんね!
母と娘、感動の再会!
このシーンで、フイカの娘であるペンドラ・シリュウを演じたアイビー・ウォンちゃんとは、昨年2018年にイベントにて、『ローグ・ワン』撮影時以来の再会をされたそうです。
あの子がこんなに大きくなったとは!フイカとペンドラが、もしそのまま幸せに暮らしていたら…とあったかも知れない世界を想像させられるような、ファンが泣く1枚です…
こうして再会したアイビー・ウォンちゃん、「いい子で、相変わらずかわいい。会って思わず抱きしめてしまいました。その後、一緒に鬼ごっこをしちゃいました(笑)」。
一緒に鬼ごっことは、ほっこりしますね・・・
アイビー・ウォンちゃんもサイン会を開くこともあり、ファンやイベント主催者からはシーナさんとアイビーちゃんの親子サイン会の要望も結構あるそうです!これは実現して欲しい…
ペンドラの運命に衝撃!フイカのその後は…
シーナさんはファンから、「(『ローグ・ワン』劇中で)あの後、2人はどうなったの?」と聞かれることもあるそうですが、ここで映画では描かれていない設定を改めて確認してみましょう。
『ローグ・ワン』小説版では市街戦の後、父のラーン・シリュウがぐずるペンドラを抱きかかえて住居を後にする場面が描かれていますが、彼らはデス・スターのスーパーレーザーの砲撃によって、何が起きたかわからないうちに亡くなったという記述があります。
この場面では、フイカは2人と同じ場所にいないために生死についての明確な記述はありません(とはいえ、あの砲撃でジェダ・シティは完全に破壊されているので、よほど遠くに離れていない限り、きびしいところかと思いますが…)。
こうした小説版での記述をお伝えすると、「悲しい!亡くなっちゃったんだ。そうか…なんか知らない方が良かったな…(生死は)どうなったんでしょう、みたいな風にしてるのかなと思ってた。自分がやった役なので、亡くなったというのはちょっと悲しいですね」と、フイカとペンドラの運命を嘆いていました。
いや!でもフイカの生死は明確になってないですから!と私から改めて残された希望をお話しましたが、「私もきっとどこかでひっそりと亡くなったんでしょうね…もし生き残っていても、それはそれで悲しいですね。子供と旦那が亡くなって…」と、どっちに転んでも悲しいお話に…
こんなに銀河に悲しみをもたらすとは…許せない、帝国軍!と、帝国へのストレートな怒りを改めて感じました。なんか新鮮!
実は『ローグ・ワン』への出演は、撮影日程がずれて別の撮影と重なってしまい、危うくお断りをしそうになったものの、スケジュールを考慮してもらったため出演出来たという経緯が! 今、振り返ると出演出来て良かったと実感しているそうです。
ロンドンでの子育てと女優業
ロンドンの子育て事情
ロンドンで生活し、子育てをしながら女優業をされているシーナさん。
ロンドンで生活する上で良い点は、医療費が無償であること。お子さんの出産もロンドンでされましたが、出産費もかかりません。
医療費が無償なのは良い反面、無償のために診療希望の人が多いので予約を取って行かなければならず、医療機関は常に混雑。お金を払ってでも早く診て欲しいという時もあるそうです。
撮影の間、お子さんは保育園に預けてお仕事へ。ロンドンは働く母親も多く、これは一般的とのことで、日本と変わらない光景です。
また、お子さんがまだ小さいため映画館になかなか行けないというお悩みも。ロンドンにも子供と一緒に見に行ける劇場がありますが、集中して見るのは難しく、家で映画を一緒に2時間見続けるのもなかなか大変。
撮影のお仕事の真っ最中は、「育児や家事の両立は、どうすればいいんだろうと思いますよね」と言われるように、帰ってからやらなければならないことも多く、何も映画を見られずに寝てしまう…という、お仕事の違いこそあれ、小さいお子さんの保護者で働いている方ならば、とても頷ける「あるある」です。
「家族の支えなしでは、女優と子育ての両立は難しいです。忙しいと旦那にしわ寄せがいくので文句は言われますが、基本的には協力的ですし、日本の母も毎年孫に会いに来るがてら、手伝いに来てくれます。イタリアに住んでいる義理の両親もしょっちゅう孫の面倒と手伝いに来てくれますので、感謝しないと罰が当たる状態ですが、家族仲がいいのと家族が多い方が楽しい!というのもあります。お陰で息子は超がつくほど社交的で明るく育っています」
ご家族で助け合いながら仕事と育児を両立されているということで、このあたりは共働きのご家庭をお持ちの方は共感されるでしょう…
このように公私ともにお忙しいために、ご自身が出演された映画やテレビで未見の作品も多いのだとか !次から次へと撮影をこなしているので、どうしても多数の作品に出演されている時に限って見られない状態になりやすいそうです。
「SNSで友達が(シーナさんの出演作を)今日見たよ、とか映っているシーンの写真を送ってくれたりすることで、知ったりすることがほとんどです。それもとても助かり、感謝しているんです」
イギリスの俳優事情
その女優のお仕事は、どのように出演が決まっていくものなのでしょうか。
イギリスは、税優遇措置があるため『スター・ウォーズ』をはじめとした多くのハリウッド映画が撮影されており、多数の大作映画への出演のチャンスがあります。
お子さんがいらっしゃるなどお忙しいこともあり、自分で案件を探して応募するよりもエージェンシーから紹介を受けていますが、それでも十分にお忙しい状況になるほどのお仕事が。
また、イギリスでは労働法により撮影の間を11時間空けなければならないと定められているほか、テレビや映画ではどんなに小さな役やエキストラであっても決まった金額が支払われるとのこと。
有志にノベルティだけをプレゼントするエキストラ募集や、タイトなスケジュールで制作されている日本とは大きく制作事情が異なることを感じます。
オーディション/撮影でのピンチ!
オーディションでは、その仕事が取れるかどうかわからない中で、セリフを覚えなければならないというつらさも。
中には、前日に大量のセリフの台本が送られてきて、必死に覚えて臨んだところ、当日のオーディションでは全然違うセリフを読まされることになり、驚くこともあったそうです! また、役を得ることが出来たとしても、実際の作品では台詞がカットされたり、出演したシーンが丸々カットされたりすることも少なくないと言います。
これとは違うベクトルで大変だった撮影は、ある映画での手持ちカメラによる長回しのシーン。テイクが30回にも及ぶ中、メインキャストはだんだんおかしくなり、シリアスなシーンで長セリフであるにも関わらず、明らかに笑いをこらえている状態に!
撮り直しが続き、ピリピリしている監督たち。ここで笑ってしまったら大変なことになりますが、笑いをこらえているそのメインキャストを見ていると、こちらもおかしくてたまらなくなり、シーナさんまでピンチに!カメラはシーナさんの方を向いています…
この極限状況を、演技の中で顔を遮ることでなんとか切り抜けたシーナさん。そのメインキャストからは、撮影が終わった後に「ありがとう」と握手で感謝を伝えられたそうです!
あのスターって、やっぱりイメージ通りですか?
多くの撮影現場で活躍されているだけあって、数々の映画スターとお会いする機会も多いシーナさん。例えば、出演された『47RONIN』主演のキアヌ・リーブスって、公園でぼっち飯を目撃されたり、ハリウッドスターらしからぬいい人そうなイメージがありますが、やっぱりいい人なんですか?
「キアヌ・リーブスは、すごく…超越した方」
『47RONIN』打ち上げパーティーにて、撮影中は仕事中なので頼めなかったこともあって、写真やサインを求める来場者に囲まれたキアヌ・リーブス。
マネージャーが止めに入ろうとする中、「大丈夫。僕はみんなと写真撮るから、落ち着いて」と、無表情で穏やかに話す姿に「欲などがなく、たぶん悟っちゃってる。仏様のような人」だと感じたそうです!あぁ、イメージ通りだ…
そのほか、トム・クルーズは「ザ・ハリウッドスター」、ジョニー・デップも「トンでる感じ」、サイモン・ペッグは「いい人で、とても自然体な方。私の個人的なイメージですと、イギリス人の俳優はそういうナチュラルな方が多く、アメリカの俳優はオーラのある方が多いかな」 と、みなさんファンが抱くイメージ通りの印象のようです。
ハリウッドで、アジア系俳優の存在感が 増しているのは本当?
昨年2018年は、キャストのほとんどがアジア系のハリウッドメジャースタジオ作品である『クレイジー・リッチ!』が全米で大ヒットしたほか、メジャースタジオ配給作品でアジア系が主役を演じた初のスリラー映画『search/サーチ』など、アジア系俳優がハリウッド映画において大きく躍進した年でした。
※余談1:『クレイジー・リッチ!』出演のジェンマ・チャンは、シーナさんの同級生だそうです。
※余談2:『クレイジー・リッチ!』の原題は「Crazy Rich Asians」ですが、シーナさんに邦題をお伝えしたら、驚いていました。ですよね…
『最後のジェダイ』でもケリー・マリー・トランが主要キャラクターのローズを演じていましたが、海外の撮影現場で働く日本人として、この時流にどのようなことを感じられているのでしょうか。
「日本人役は最近増えていると思います。特に去年からですかね。小さい役も入れれば去年は毎月のように来ていたような。アジア人役であればもっとです。今年に入ってからも、すでに日本人/アジア人役のオーディションが来ています。 」
アジア系俳優の躍進には、特にアメリカ映画においてあらゆる人種への配慮の動きが高まっていることに関係していると、シーナさんは見ています。
シーナさんは、撮影に参加された実写版『ダンボ』(3月29日日本公開)を振り返り、「現実の歴史通りならば白人ばかりのはずの舞台設定の中で、撮影現場ではおしゃれな格好をアジア人や黒人の姿も。あらゆる人種の人がいるように、上手くバランスを取っているようです」。
ただ、日本はハリウッドとまだ近くないのかなと感じる事もあり、日本人の役が中国人になってしまうことも。「香港の映画俳優の方がコネクションがあるようですし、中国語以外に英語が公用語であることも大きいのでしょうね」 。
「日本の映画、ドラマは国内だけでも十分な人気があり、日本の中で成り立っているから、海外にはそれほど力を入れてない印象もありますね。もちろん黒澤明監督や小津安二郎監督は海外でも根強いファンが多いし、また北野武監督や 『万引き家族』の是枝裕和監督などもいらっしゃいますが」。
例えば韓国の音楽は国家レベルで力を入れているため、世界進出していますが、日本のエンタテイメントの海外進出は今後どうなっていくのでしょうか。シーナさんをはじめとした、海外での日本人俳優の活躍もより存在感を増していくことでしょう。
日本人女性初の『スター・ウォーズ』キャストの今、 そしてこれから
シーナさんと同じくロンドンを拠点にされている日本人俳優では、『最後のジェダイ』にレジスタンスの将校、イドローゼン・ガワット役で出演された伊川東吾さんともお知り合い。また『ジェダイの帰還』でYウィングパイロットのテルシジ中尉を演じた楠原映二さんとは公私ともに交流があったそうです。
ロンドンは、『スター・ウォーズ』日本人キャストを多く生み出す街のようです。
今後も続いていく『スター・ウォーズ』シリーズですが、シーナさんも「別の役でも呼んでくれないかな!ディエゴ・ルナ主演の実写テレビシリーズなら、『ローグ・ワン』以前のお話だからフイカも出られるかも…」と、他の作品への出演にも意欲を見せていらっしゃいました。
日本人女性初の『スター・ウォーズ』キャストである長井シーナ志保子さん。ロンドン、いや世界のエンタテイメントの最前線でお仕事をしながら子育てもされるその姿は、『スター・ウォーズ』ファンだけに限らず、多くの方々に知って欲しいと改めて思いました。
今年はロンドンの女優活動のみならず、ニューヨークのテレビでもご自身で監督された短編映画「居場所 –where you belong-」や、音楽活動をされている映像が紹介される予定など、新たなお話が入って来ているそうです。
今後のご活躍を楽しみにしています!
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