Disney+ (ディズニープラス)で配信中の「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」第4話「アト・アティンは記憶にねえ」レビュー/トリビアチェックポイントです。
この記事では、「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」第4話「アト・アティンは記憶にねえ」のストーリーやレビュー(感想・考察・批評)、トリビアの解説といった、このエピソードをより深く知るためのテキストを綴っています。
この記事はネタバレがございますので、「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」第4話「アト・アティンは記憶にねえ」の本編鑑賞後にご覧ください。
「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」の他のエピソードについては、以下のカテゴリーからご参照ください。
「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」第4話「アト・アティンは記憶にねえ」レビュー
戦争に明け暮れる、悪夢のような故郷に似た場所
座標が導くハイパースペースを抜けると、故郷とそっくりな、しかし荒廃した惑星であった。
全8話の「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」は、この第4話「アト・アティンは記憶にねえ」までが前半と言える。
ここから折り返しとなるというエピソードのポジションの通り、シリーズ後半への興味を掻き立てるような謎が仕掛けられている!
月の天文台のキムが算出し、ジョッド・ナ・ナウッドが強奪した座標の先にある惑星は、子どもたちがよく知るアト・アティンの面影はあるのの、故郷ではない場所だった。
ウィム、ニール、ファーン、KBは、ジョッド・ナ・ナウッドとSM-33をオニックス・シンダーに残して周囲を探索。
そこは家やスクールトラム、学校のほか、アト・アティンのランドマークだった管理官の塔など、よく知っている日常が、破壊され、時間が経ち、荒廃した非日常となっていた。
パラレルワールド、マルチバースのうちのひとつへ迷い込む、または劇中でウィムが言うように長い年月を眠って、暗い未来へとタイムスリップでもしたかのようで、『スター・ウォーズ』ではめずらしい展開だ。
オニックス・シンダー内で、SM-33はジョッド・ナ・ナウッドにアト・アクランにいると記憶が乱れるのだと言う。
この惑星の名前はアト・アクランであり、危険だらけの場所でSM-33はよく知っているようだ。
アト・アティンについても、この惑星にいると思い起こされるようだが、SM-33はエピソードタイトルにもなっている「アト・アティンは記憶にねえ」というセリフを言う(このセリフは、第2話「バリアを越えてはるか遠くへ」、第3話「航行に問題のあるとても面白い星」ですでにSM-33が言っている)。
ウィム、ニール、ファーン、KBは、アト・アクランの勢力であるトロイクの少女、ヘイナと遭遇。
トロイクは、ハッタンという別の勢力と争っており、その拠点となっているのはアト・アティンで子どもたちが通っていた学校のような建物だ。
ヘイナの父であるストリックス将軍によると、子どもの強さを認めて鍛え、子どもを大人として扱うのだという。
故郷であるアト・アティンへ帰る手がかりを探す一行に、ヘイナは「落ちた聖域」のことを教える。そこには異星の座標が彫られた古い彫刻があるというのだ。
子どもたちは堕ちた聖域へ行く勇気があるか見定めるため、戦士たちと鍛錬することに。
仲直りをする勇気
アト・アクランは、アト・アティンの子どもたちがよく知る平和な日常の光景が破壊され、子どもも大人として扱うといえば聞こえはいいが、戦争に駆り出される悪夢のような世界だ。
当初ヘイナと会ったウィムは、星の支配権をかけて大人と戦闘しているのかとワクワクし、戦闘訓練でも積極的な姿勢を見せるなど、相変わらず子どもらしい反応をする。
しかし、心優しく人を傷つけたくないニールは、ヘイナに連れられて戦争の中で生きるトロイクの暮らしの現実を見る。
敵との報復の連続の中、戦って生き延びてきたヘイナとの交流で、自分の情けなさすらさらけ出すも、終わりを見出せない戦いの虚しさを見出し、人を傷つけることを拒否し、そして本当に勇敢なことは仲直りすることであることを知っているニールの強さが見える。
真に強い者は、ニールのようなひとだ。
『スター・「ウォーズ」』という戦争を描いたこのシリーズの中で、ここまでストレートに戦争の愚かさ、非戦を打ち出しているこのエピソードは、数ある作品群でもめずらしい。
基本的には、自由を奪う敵に対して、守るための戦いとその勇気を描いてきたシリーズであり、戦いそのものを完全否定するような描写はそこまで多くない(もちろん、ヨーダの「戦争で偉大になったものなどおらん」といったセリフもあるが)。
私たちが住む惑星でも、こうしてドラマシリーズを見て平和に暮らし、戦いごっこで遊ぶ子どもたちがいる一方で、大人たちが始めた悲惨な戦争の中で生きる子どもたちがいる。そう、それはよく似た別の惑星のお話ではなく、同じ惑星の出来事だ。
もちろん、ニールの言うことは子どもが言う理想かも知れない。しかし、子どもが理想や夢を言えなくて、誰が言うというのか。
そしてジョッド・ナ・ナウッドが、少しのズルさとともにトロイクとハッタンの争いを収め、そんな子どもたちを守るのも経験を持っている大人としての役割を果たしている。
アト・アクランの子どもたちに自分が配給された食料を分けてあげる、心優しいニール。
そしてこの第4話「アト・アティンは記憶にねえ」のクライマックスでは、優しいだけではなくここぞというタイミングでその勇気を示した。
このニールの心情を表現するため、ニールはロバート・ティモシー・スミスの演技をフェイシャル・キャプチャーのカメラを付けた状態で撮影・記録し、アニマトロニクスの頭部を被ったスーツ・アクターの演技をさらに撮影している。
つまり、フェイシャル・キャプチャーとアニマトロニクスの両方の手法によってニールの演技は実現しており、上記のようにストーリーやキャラクターの心情を感じ取れる、その表現力にも注目したい。
そして、冒険の中で立場やタイプが違う少年少女が出会い、ほのかな恋を経験していくのも、こうしたジュブナイルの定番だ。
そんなニールにフォーカスした回が第4話「アト・アティンは記憶にねえ」で、第3話「航行に問題のあるとても面白い星」ではKBを取り上げたように、これからウィムやファーンを中心としたエピソードがやって来るのだろう。
失われたアト・アティンの座標
ヘイナに教えてもらった「落ちた聖域」は、アト・アティンでは立ち入り禁止とされていた管理官の塔に似た建造物で、中には座標が記されていた。
アト・アティン、アト・アクランのほか、アト・エイトゥ、アト・アリッシア、アト・アラヴィン、アト・アコダの名前が登場。これが「旧共和国の宝石」なのか?
細かい部分もこれまでの『スター・ウォーズ』シリーズとは異なっているアト・アクラン。
アト・アクランが、アト・アティンと同様に「旧共和国の宝石」だとすると、銀河から隔絶され、隠された惑星や秘境であるため、イオピーも角がある変種となっており、旧共和国の時代の兵器が残るなどガラパゴス化した独自の生態系や技術が広がっていることがその裏付けとして考えられそうだ。
そしてエピソードタイトルの「アト・アティンは記憶にねえ」と言い続けていたSM-33が、第1話「ホントの冒険ができるかも」で登場したファーンのドロイド制御のテクニックによって、実は知っていたことが判明したアト・アティンの座標の行方。
SM-33が前に仕えていた船長による血塗られた命令により、アト・アティンは前の船長のみが知るものとなってしまったのだろうか?
後半の「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」は、その昔に繰り広げられた宝の地図を巡る争いという、海賊ものらしい展開から広がっていくことになりそうだ。
「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」第4話「アト・アティンは記憶にねえ」トリビアチェックポイント
Rennod’s ghost
アト・アティンに着いたと思ったジョッド・ナ・ナウッドは(実際にはアト・アクラン)、「Rennod’s ghost」と今回初登場となる感嘆の言葉を言う。
この「Rennod」は、後ろから読むと「Donner」となり、『グーニーズ』を監督したリチャード・ドナーを連想させる。
イオピー
ヘイナは、ハッタンの巡視隊が盗んだイオピーを発見したと父であるストリックス将軍に報告している。ニールには、アト・アティンでは学校だった建物の屋上で、臭いけど生活に欠かせない動物だと説明している。
イオピーは、『エピソード1/ファントム・メナス』にてタトゥイーンでクワイ=ガン・ジンらが移動時に騎乗していたほか、「クローン・ウォーズ」ではタトゥイーン以外の惑星にも登場。「オビ=ワン・ケノービ」では、オビ=ワンがタトゥイーンでの移動に用いている。
アト・アクランのイオピーは、これまでのシリーズに登場したイオピーと異なり、角がある変種となっている。
「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」はDisney+ (ディズニープラス)で配信中。
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