Disney+ (ディズニープラス)で配信中の「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」第2話「バリアを越えてはるか遠くへ」レビュー/トリビアチェックポイントです。
この記事では、「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」第2話「バリアを越えてはるか遠くへ」」のストーリーやレビュー(感想・考察・批評)、トリビアの解説といった、このエピソードをより深く知るためのテキストを綴っています。
この記事はネタバレがございますので、「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」第2話「バリアを越えてはるか遠くへ」の本編鑑賞後にご覧ください。
「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」の他のエピソードについては、以下のカテゴリーからご参照ください。
「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」第2話「バリアを越えてはるか遠くへ」レビュー
荒くれ者の海賊たちの「クズと悪党の巣窟」へ
それまでの平和な生活から一変して、広大で暗く、何もない宇宙に放り出された子どもたち。ホントの冒険がしたいとはいっても、ここまで本当に危険な目に遭うとは。そして、帰りたくてもなぜか彼らの故郷は誰も知らない場所だった!
第1話「ホントの冒険ができるかも」で、アト・アティンに埋まっていた宇宙船、オニックス・シンダーが動き出し、アト・アティンを囲む決して超えてはならない「バリア」を通り越し、ハイパースペースで遠くの宙域へと飛び出してしまったウィム、ニール、ファーン、KB。
オニックス・シンダーの船内で起動したドロイド、SM-33をあっさり手下に従えることには成功したが、SM-33のメモリー・バンクにはアト・アティンはない。仕方なく、アト・アティンへの帰り道を探るため、最寄りの港であるポート・ボーゴへと向かうことに。
そのポート・ボーゴは、子どもたちには場違い過ぎる荒くれ者の海賊たちの世界だった…
アメリカの住宅地のようなアト・アティンから、舞台は宇宙に移り、おなじみのハイパースペース、そして暗く汚く、使用感のあるメカニックなどがいっぱいの「クズと悪党の巣窟」へと迷い込んでいき、第1話「ホントの冒険ができるかも」とうって変わって、これまでの『スター・ウォーズ』らしいビジュアルが展開。
カンティーナに代表される『スター・ウォーズ』の危険なならず者たちの世界が拡張されており、ファンにとって心踊るものになっているだろう。
この海賊たちの寄港地であるポート・ボーゴのほか、古い宇宙船であるオニックス・シンダーの船内に残る骸骨、古びた海賊たちの遺品など、本格的に海賊の物語の雰囲気が出て来ている。
パーカッションやバイオリンなどを用いた音楽も、海賊映画を思わせる。
これを表現する美術も、細部に渡って作り込まれているように見え、相変わらず見事だ。
目指すべき故郷は「宝の尽きない消えた惑星」
第2話「バリアを越えてはるか遠くへ」のストーリーが展開するにつれて、ウィム、ニール、ファーン、KBが目指すべき故郷であるアト・アティンで、これまでどのような環境で暮らしていたのか明らかになっていく。
まず、子どもたちにとってハイパースペース航行は初めてであることがわかる。
『スター・ウォーズ』ギャラクシーでは、宇宙船によるハイパースペース航行は広く普及している移動方法であるように見えるものの、これだけならまだ子どもだから経験がないという理由も考えられるが、息子たちが宇宙船に乗って行ってしまったところを目撃したウィムの父に、セーフティ・ドロイドたちは宇宙船の出入りは禁止であり、バリアの突破は重大な違反行為だと告げている。
つまり、『スター・ウォーズ』ギャラクシーの惑星であるにも関わらず、アト・アティンは宇宙船の往来がないのだ。非常に奇妙だ。
さらに、アト・アティンという惑星はSM-33のメモリー・バンクにはなく、ポート・ボーゴでアト・アティンまでの帰り道を聞いても、宝の尽きない消えた惑星であると、誰もが実在する惑星だと思っていない。
アト・アティンは伝説上の惑星であり、誰も行き方を知らない惑星なのだ。
第1話「ホントの冒険ができるかも」では、子どもたちの日常が描かれていたが、その日常は銀河の大多数の人たちにとっては、お伽話の宝島の暮らしだったのかも知れない。
主人公たちが外の世界に出ることで、自分たちの故郷であるアト・アティンが、いかに特異な惑星であるかがわかってくる構図が面白い。
第1話「ホントの冒険ができるかも」のレビューでは、1980年代の映画作品を下敷きにした娯楽作であるため、ストーリーやキャラクター、キャラクター配置に既視感があると書いた。
しかし、この「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」のシリーズを通した物語において、「帰るべき故郷であるアト・アティンとは?」という大きな謎を配することで、縦のストーリーラインが敷かれて興味を惹きつつ、展開にひねりが加えられることで、この懸念が払拭されていると感じた。
もちろん、まだある程度、最終的なストーリーの終着点として「冒険を夢見ていたけど、やっぱり家族や故郷が一番」のようなこれまでに多く語られてきた落ち着けどころとなりそうだとも思うが、その場合にも「故郷こそが宝島だった」という身の回りに家族や友達が宝であり、物質的な宝もすぐ身近にあった、という二重の意味を付けることも出来そうだ。
ジェダイに憧れる少年が、ジョッドと出会う
そして、主演のジュード・ロウが演じるジョッド・ナ・ナウッドが、第2話「バリアを越えてはるか遠くへ」のラストカットでようやく顔を見せた。
ジョッドが手をかざすとカギが浮遊し、ジェダイに憧れていた少年、ウィムはその様子を目の当たりにする。ここぞと言うタイミングで「フォースのテーマ」が響く!
ジョッドは本物のフォース感知者なのか、または「オビ=ワン・ケノービ」に登場したハジャ・エストリーのように、ジェダイを騙る詐欺師なのか?もし本当にフォース感知者だとしたら、ごっこ遊びをするほどジェダイに夢見ていた少年が実際にフォース感知者と出会った時に、どのようなドラマが待ち受けているのか。
ただジョッド・ナ・ナウッドの正体は、牢に閉じ込められていた状況や吹き替えキャストが同一であることなどから、第1話「ホントの冒険ができるかも」冒頭で海賊たちに反乱を起こされたシルヴォ船長だろう。宝の尽きない消えた惑星であるアト・アティンへ行って宝を独り占めするため、きっとジョッド・ナ・ナウッドは子供たちを利用し、子どもたちは故郷へ帰るため協力関係を結ぶのだろう。
しかし、誰も知らない惑星をどのように探していくのか。第2話までで、ジョッド・ナ・ナウッドとウィム、ニール、ファーン、KB、そしてSM-33と、「スケルトン・クルー」の主要キャラクターが出揃い、ストーリーの序盤が整った。
本当の冒険は、ここからだ。
「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」第2話「バリアを越えてはるか遠くへ」トリビアチェックポイント
SM-33
オニックス・シンダーで再起動したドロイドのSM-33。SM-33の名前の由来は、「ピーター・パン」のフック船長の部下のスミーからだ。
リートと呼ばれるアルファベットを形の似た数字や記号に変化させる英語圏のネット上での表記法で、「SM-33」→「SMEE」となるというわけだ。
この第2話「バリアを越えてはるか遠くへ」のエピソード監督は、ディズニープラス配信作品の『ピーター・パン&ウェンディ』を監督したデヴィッド・ロウリーである。また、「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」主演のジュード・ロウは、『ピーター・パン&ウェンディ』でフック船長を演じていた。
SM-33の声の出演は、『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』や『ショーン・オブ・ザ・デッド』などに出演したニック・フロストだ。
アトロン
ファーンにアト・アティンへ連れて行くよう言われたSM-33は、アトロンのことかと聞き返す。
アトロンは、「スター・ウォーズ 反乱者たち」にて反乱軍が基地として見出した惑星。巨大なクモのようなクリクナが生息しているほか、フォースのライトサイドとダークサイドの中間の存在であるというベンドゥがいた。
反乱軍はアトロンにチョッパー基地を設立するも、後にスローン第提督が率いる帝国軍の攻撃によって撤退した。
アルダーニ
アトロンのほか、SM-33がファーンに聞き返している行き先の中にあるアルダーニは、「キャシアン・アンドー」にて登場した惑星。
キャシアン・アンドーは、ルーセン・レイエルによりアルダーニ要塞にある帝国1宙域での四半期分の給与資金帝国軍の資金の強奪作戦に参加。
アルダーニで3年に1度起きる天体ショー「アルダーニの目」が起きる中、キャシアン・アンドーは大きな犠牲を払いながら、8000万クレジットといわれる莫大な資金を奪取した。
SM-33は、アルダーニを硫黄の沼の惑星と呼んでいるが、「キャシアン・アンドー」の劇中では特にそのような描写はなかった。また、アトロンとアルダーニとともに挙げているアル・アルコーは、これまで登場していない名称だ。
ポート・ボーゴ
ポート・ボーゴは、レジェンズとなった1995 年の小説「Young Jedi Knights: Shadow Academy」にて登場した、小惑星を元とした宇宙港のボーゴ・プライムからの引用だ。
書籍「Star Wars: Smuggler’s Guide」では、ボーゴ・プライムが言及されており、すでに正史(カノン)にはなっていた。
ポート・ボーゴの宇宙船
ポート・ボーゴの周辺には、多くの宇宙船が見られる。
「マンダロリアン」シーズン3でのゴリアン・シャードの乗艦と同じキュミュラス級コルセアのほか、「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」第1話「ホントの冒険ができるかも」でシルヴォ船長が率いる海賊たちが乗っていたフリゲートも見られ、ブルータスたちがポート・ボーゴに来ていることを裏付けている。
また、『スカイウォーカーの夜明け(エピソード9)』に登場したロザリアン・コルベット、ゴザンティ武装輸送船、「クローン・ウォーズ」に登場したペルタ級フリゲート、コルサント貨物船、『ジェダイの帰還(エピソード6)』に登場したブラハトック級ガンシップ、「反乱者たち」でのケツー・オンヨの乗機シャドウ・キャスターと同型のランサー級追跡船、グアヴィアン・デスギャングが使っていたアヴァンダー級貨物船、「ギャラクシーズ・エッジ」でのホンドー・オナカーのカトゥーニの船種であるZH-40トリビューン級軽貨物船がある。
さらに、『新たなる希望(エピソード4)』制作時の初期のミレニアム・ファルコンのモデルの姿も見られる!コリン・キャントウェルによって海賊船として準備されていたものだが、「スペース1999」のイーグルに似ていたためデザインを変更することに。
コックピット部分を引き継ぎつつ、ミレニアム・ファルコンは現在のデザインとなり、初期デザインはタンティブⅣ(コレリアン・コルベット)へと引き継がれていった。
海賊のたまり場に、初期デザインの海賊船がやって来ているとは…
ティーク
渡し船の船頭は、レジェンズとなったテレビ映画 『エンドア:魔空の妖精』 に登場した種族のティークだ!
ティークはエンドアに住む種族であり、『エンドア:魔空の妖精』に登場した個体はエンドアの森に住むノア・ブライクァロンとともに暮らしていた。
『エンドア:魔空の妖精』では、走るスピードが並外れているというティークの特徴も見られる。
ディズニーランドのアトラクション「スター・ツアーズ」では、搭乗案内ビデオにティークの姿が見られる。
また正史(カノン)では、小説「ラスト・ショット」に種族としてのティークが登場している。
シーリン
ファーンとKBを助けようとするメルナの種族は、シーリンだ。
シーリンは、『ジェダイの帰還』の『特別篇』から登場するジャバの宮殿のダンサーのリスタール・サントの種族であり、「スター・ウォーズ:アコライト」に登場したソルのパダワンであるジェキ・ロンは、シーリンと人間のミックスである。
アスカジアン
ポート・ボーゴのダンスクラブの前にて、アスカジアンの姿が見られる。
アスカジアンは、『ジェダイの帰還(エピソード6)』にてジャバの宮殿にいたダンサーのヤーナ・ダル・ガーガンの種族だ。
kriffing
ウィムとニールに対して、2デックを要求するコックは、デックという通貨がわからないニールに「What do you think this is, a kriffing charity?(どういうつもりなんだ、慈善事業か?)」と言う。
このセリフの中の「kriffing」は、レジェンズとなった小説「未来への展望」から登場した侮蔑のスラングであり、小説やコミックなどで用いられている。
映像作品では初登場であるが、現実世界のスラングを使用すると様々な制約がかかる中で、『スター・ウォーズ』ギャラクシーの中で使われているスラングということで誰が見ても問題ないシーンとなっている。
ファズボール
KBが海賊たちの市場で見つけたカゴに入れられている生物は、ディズニーランドで運営されていたアトラクション「キャプテンEO」で、マイケル・ジャクソン演じるキャプテンEOとともにいるファズボールだ!
「キャプテンEO」は、主演・音楽マイケル・ジャクソン、製作総指揮・共同脚本ジョージ・ルーカス、監督フランシス・フォード・コッポラというスタッフ/キャストで制作された3D映画のアトラクション。
「スター・ツアーズ」よりも早く、ジョージ・ルーカスがディズニーのテーマパークで手掛けたアトラクションだった。
ファズボールはキャプテンEO率いる落ちこぼれクルーの一員で、演奏を展開する時にはロボットのメジャードモが変形したベースを奏でるキャラクターだ。
まさかファズボールが、『スター・ウォーズ』ギャラクシーに入って来るとは…
8D シリーズ製錬ドロイド
ポート・ボーゴでのタトゥーアーティストのドロイドは、『エピソード6/ジェダイの帰還』のジャバの宮殿にて、パワードロイドを拷問していた8D8と同じ8Dシリーズ製錬ドロイドだ。
このタトゥーアーティストの8Dシリーズ製錬ドロイドは、ボディにタトゥーのようにデザインが施されている。
デシリジク・カジディクのタトゥー
このタトゥーアーティストの8Dシリーズ製錬ドロイドが彫っているのは、デシリジク・カジディクの紋章だ。
ジャバ・ザ・ハットは、自身が属するデシリジク・カジディクの紋章を腕にしていた。
「カリブの海賊」
ウィム、ニール、ファーン、KBが牢に囚われているシーンで聞こえる口笛は、ディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」の牢屋に海賊たちが囚われている場面で用いられている口笛の音響効果と同じだ!
牢屋のカギを、SM-33のフォトレセプター部分に棲むネズミのような生物であるスノーボールに取って来させようとするあたりも、「カリブの海賊」で同じく牢屋の海賊たちがカギをくわえた犬を手懐けようとする場面を彷彿とさせる。
「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」はDisney+ (ディズニープラス)で配信中。
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