日本のアニメスタジオによるオリジナル短編アニメ集「スター・ウォーズ:ビジョンズ」ジャパン キックオフイベントが、恵比寿ガーデンプレイス ザ・ガーデンホールにて開催され、制作に携わった日本の7つのアニメーションスタジオから9名の監督と、スペシャルゲストとして『スター・ウォーズ』とアニメのファンであるモデルの市川紗椰さんが登壇しました。
日本の文化や映画から影響を受けた『スター・ウォーズ』を、日本のアニメーションスタジオが制作するというわけで、「スター・ウォーズ:ビジョンズ」の監督が集まる日本発のプロモーションイベントです。
東京都は4回目の緊急事態宣言下となっていますが、多くのメディアが集まる久しぶりの『スター・ウォーズ』の記者会見イベントとなり、注目度の高さが伺えます。
「ビジョンズ」全9作、7つの日本のアニメスタジオが一同に!
「スター・ウォーズ:ビジョンズ」ジャパン キックオフイベントでは、まずルーカスフィルムのエグゼクティブ・プロデューサーであるジェームズ・ウォーさんより、「日本のアニメは、ルーカスフィルムにインスピレーションを長い間にわたって与え続けてくれました。この作品はそんな日本のアニメを生んだ日本文化へ贈る、ルーカスフィルムからのラブレターです」と特別メッセージが紹介。
このジャパン キックオフイベントにて「スター・ウォーズ:ビジョンズ」の監督として登壇したのは、神風動画の水崎淳平総監督、キネマシトラスの垪和等監督、サイエンスSARUのチェ・ウニョン監督とアベル・ゴンゴラ監督、ジェノスタジオの五十嵐祐貴監督、スタジオコロリドの木村拓監督、トリガーの今石洋之監督と大塚雅彦監督、プロダクションI.Gの神山健治監督。
それぞれの作品の監督の言葉から、「スター・ウォーズ:ビジョンズ」のこれまで明かされていなかったストーリーの一端が語られました!
神風動画/「The Duel」
「ジョジョの奇妙な冒険」の躍動感のあるオープニング映像のほか、「ポプテピピック」で大きな話題を呼び、「スター・ウォーズ:ビジョンズ」と同様のアメリカの作品をアニメ化した『ニンジャバットマン』の神風動画が制作するのは「The Duel(邦題が、一報解禁時の「デュエル」から変更)」。
「The Duel」の水崎淳平総監督は「スター・ウォーズは今までシスとジェダイの対立構造が描かれているのですが、今回は個人と個人の間でライトセーバーを持ち戦ったら、という『スター・ウォーズの世界の端っこ』で行われている物語を描きたいと思いました」とコメント。
キネマシトラス/「村の花嫁」
先日、ハリウッド実写映画化されることが発表された「メイドインアビス」や、劇場版が話題を呼んでいる「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」など、海外ファンからの支持も熱い話題作を生み出してきたキネマシトラスは、「村の花嫁」を制作。
「村の花嫁」の垪和等監督は、「銀河にはいろいろな世界や風習があるということを、その文化の風習が最も表れる結婚式を通して描きました」と言います。
これまでの『スター・ウォーズ』にはない雰囲気の作品となりそうです…
サイエンスSARU/「赤霧」「T0-B1」
『夜は短し歩けよ乙女』、『夜明け告げるルーのうた』、『きみと、波にのれたら 』といった作品で映画賞を受賞し、湯浅政明監督作で知られているサイエンスSARUは、「赤霧」と「T0-B1」を制作。
チェ・ウニョン監督は「赤霧」を、「一人のジェダイとプリンセスのはかないラブストーリー」と、アベル・ゴンゴラ監督は「T0-B1」を「主人公が小さな人型ドロイドなのですが、夢をあきらめそうになりながらも成長していく姿を描いています」と語り、「スター・ウォーズ:ビジョンズ」の物語の幅広さが感じられます。
ジェノスタジオ/「のらうさロップと緋桜お蝶」のらうさロップはジャクソンの影響だった!
『虐殺器官』制作のため立ち上げられ、「ゴールデンカムイ」で知られるジェノスタジオは、うさ耳けもの要素が早くも各方面で話題となっている「のらうさロップと緋桜お蝶」を制作。
そんな注目度の高い「のらうさロップと緋桜お蝶」について五十嵐祐貴監督は、「『エピソード3』と『4』の間の設定で、われわれ日本人のように自然を愛する人々が住む星を舞台に、星の住民“お蝶”とスター・ウォーズのコミックスのキャラクターからインスピレーションを受けたウサギのような種族“ロップ”との、家族のような絆を描く物語です」と語ります。
『スター・ウォーズ』コミックスからインスピレーションを受けたウサギのキャラクターというのは、ジャクソンのことだと明言されており、ロップはジャクソンの種族とされるレパス・カーニヴォラスの近縁種のようなものと言われています!
ジャクソンは、1977年に刊行されたマーベルの『スター・ウォーズ』コミックスに登場したうさぎのようなデザインのエイリアン。現在では、正史(カノン)にも登場しています。
ジャクソンを日本流にアレンジしたら、けも耳ののらうさロップになるというのは理にかなっている…
スタジオコロリド/「タトゥイーン・ラプソディ」
『ペンギン・ハイウェイ』、『泣きたい私は猫をかぶる』のほか、マクドナルドなどの企業アニメCMでも知られるスタジオコロリドは「タトゥイーン・ラプソディ」を制作。
木村拓監督は「タトゥイーン・ラプソディ」について、「ロックミュージシャンを志す主人公たちを描く作品で、バンドメンバーの友情や絆を描いています。生い立ちに縛られず、自分のやりたいことを貫くことをテーマにしています」と語ります。
『スター・ウォーズ』でミュージシャンのストーリーが見られるとは!『スター・ウォーズ』の世界で自由なストーリー、テーマを描く「スター・ウォーズ:ビジョンズ」らしさが感じられます。
トリガー/「THE TWINS」「The Elder」
「キルラキル」、「リトルウィッチアカデミア」、『プロメア』、また2021年春アニメとして先日まで放送されていた「SSSS.DYNAZENON」のトリガーが制作するのは、「THE TWINS」と「The Elder」(邦題が、一報解禁時の「ツインズ」、「エルダー」から変更)。
今石洋之監督は、「『THE TWINS』は、「エピソード9」以降に帝国の残党が再起を図ろうとし、新たに双子の暗黒卿を生み出し、その二人が困難を乗り越えながら自分たちに秘められた可能性を探る物語」と言います。
音楽についても、「今回初めて、フルオーケストラを使うことが『スター・ウォーズ』の音楽性を表現できると考えました。またもう1つ僕にとって初めてだったのが、フィルムスコアリングという完成された映像を元に作曲された音楽を取り入れていくこと」と、ジョン・ウィリアムズの『スター・ウォーズ』と同様のアプローチを行ったことを明かした一方で、『プロメア』のメインスタッフをそのまま投入し、地続きで制作したため、色遣いや背景のグラデーションなど特徴となる要素をふんだんに盛り込んだということで、『スター・ウォーズ』の伝統とトリガーらしさの融合が伺えます。
一方で大塚雅弘監督は、「『The Elder』は、『エピソード1』よりも古い時代の設定で、これまでシリーズに触れたことがない人も、『スター・ウォーズ』に興味を持ってもらえればという思いで作りました。マスターとパダワンの師弟関係の騎士たちが、辺境の星で不思議な老人と出会うところから始まります。」と明かし、トリガーが描くスカイウォーカー・サーガの歴史の範囲外の新たなストーリーに期待です。
プロダクションI.G/「九人目のジェダイ」
そして『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』や『キル・ビル Vol.1』アニメーションパートで海外のファンに認知されているプロダクションI.Gは、「九人目のジェダイ」を制作。
神山健治監督は、「『エピソード9』の後、銀河に平和は訪れたのか…『スター・ウォーズ』の象徴であるライトセーバーとジェダイの騎士たちの“再生”のストーリーを描きました。かつてルーク・スカイウォーカーという名もなき青年が大海原に繰り出し冒険を繰り広げたように、『スター・ウォーズ』の原点でもある冒険譚を別の主人公で描こうと思いました」と、『スカイウォーカーの夜明け』以降のストーリーであることを紹介。
「スター・ウォーズ:ビジョンズ」は、これまでの『スター・ウォーズ』のタイムライン上にはない作品であると発表されているため、「九人目のジェダイ」が正史(カノン)の『スカイウォーカーの夜明け』の後日譚というわけではないのですが、それでも『スカイウォーカーの夜明け』へのアンサーのような内容に楽しみが膨らみます…
『スター・ウォーズ』に影響を受けた日本人スタッフによる『スター・ウォーズ』
そんな監督それぞれの『スター・ウォーズ』への想いについて話題が移ると、神山健治監督は「僕は13歳の時に初めて映画をみて、『スター・ウォーズ』を作る人になろう、と思ったんです。今は喜びしかない。無邪気な13歳の頃の気持ちに戻っています」と、まっすぐな気持ちを語ったほか、大塚雅弘監督は高校で『スター・ウォーズ』をモチーフにした作品を自作するなど、いずれも『スター・ウォーズ』に大きく影響された方々ばかり。
スペシャルゲストの市川紗椰さんは、「世界規模の『スター・ウォーズ』と日本のアニメスタジオが、しかもこんなにたくさん参加する贅沢すぎるプロジェクトです。『スター・ウォーズ』の世界を受け入れたうえで、概念を壊しさらに広げるというチャレンジに興奮しました」と語りました。
日本人スタッフによって新作『スター・ウォーズ』が語られるイベントというのは新鮮であり、「スター・ウォーズ:ビジョンズ」のコンセプトだからこそできたプロモーションイベントといえるでしょう。日本だけではなく、世界へと日本のアニメスタジオによる『スター・ウォーズ』が配信されてどのような反響が巻き起こるのか、今から思いが巡ります。
「スター・ウォーズ:ビジョンズ」は、2021年9月22日(水)よりDisney+ (ディズニープラス)にて全9作品が一挙独占、日米同時配信です。
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