SUPER8/スーパーエイト

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 人生、どうにもならない悲しい出来事や、誰にもわかってもらえないひとりぼっちな気持ちを抱えることがままある。

 多くの人にとってはスクリーンに映る映画が、そのなぐさめや励ましをくれた。そして、彼らが見るスクリーンの中では、しばしば主人公が抱える問題を宇宙からの来訪者が代弁していた。

 本作のプロデュースを務めたスティーブン・スピルバーグの『E.T.』もその1つ。両親が離婚して父親のいない少年が、地球で仲間とはぐれたエイリアンと心を交わし、ひとつ大人になる話だ。

 『SUPER8/スーパーエイト』は、不幸な事故で愛する母を失った少年が主人公。母親がいなくなってしまった家庭では、仕事熱心な父親と心が通わない。

 仲間とのゾンビ映画作りや模型作りに熱中する彼は、映画作りの最中にちょっと大人っぽい少女と、自分が住む町を一変させる不気味な「何か」と出会う。

 他所からやってきた大人たちが探すその「何か」の謎が物語を引っ張るサスペンスの効いた展開は、『LOST』のJ・J・エイブラムス監督ならではの手腕。

 映画作りにかけるボンクラ仲間たちの描写は、1度でもカメラを握ったり、何かを作ろうとした人ならば思わずうなずいてしまうシーンばかり。

 1979年の舞台設定なので、仲間の家には当時公開された『ゾンビ』のポスターなどが貼られているほか、主人公の部屋には『スター・ウォーズ』のダース・ベイダー専用タイ・アドバンストが吊るされており、主人公たちと同類の映画ファンならニヤリとしてしまうだろう。
 
 エンドクレジットで披露される劇中映画は、手作り特撮にヘタな演技(あの子役たちはへタ演技の「演技」をしたのかと思うと芸達者)といったありがちな細部を再現し、SF・ホラージャンルムービーへの偏愛にあふれ、最後まで幸せな映画体験をさせてくれる。

 スクリーンのあちこちから映画への愛情を感じ、劇中の映画少年たちがそのまま大人になったような人たちが作っていることがよくわかる。

 憎しみの連鎖も、誰にも止められなかった不幸も、大切な人を失うことも、すべてを許して生きていくことはとても難しい。

 未知なるものと出会い、「何かを失うこと」への恐れと受け入れる勇気、それでもわかり合おうとすることを知った少年を描いた本作は、21世紀になっても空からE.Tが来なかったと感じるすべての人へのフィルムなのかも知れない。

summer2005

2005年より「スター・ウォーズ ウェブログ」を運営。「『スター・ウォーズ』究極のカルトクイズ Wikia Qwizards<ウィキア・クイザード>」世界大会優勝者。ディズニープラス公式アプリ「Disney DX」のオリジナル動画や記事など、様々な出演/執筆も行っています。2010年、『ファンボーイズ』日本公開を目指す会を主宰しました。

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