Disney+ (ディズニープラス)で配信中の「スター・ウォーズ:アコライト」第8話「アコライト」レビュー/トリビアチェックポイントです。
この記事では、「スター・ウォーズ:アコライト」第8話「アコライト」のストーリーやレビュー(感想・考察・批評)、トリビアの解説といった、このエピソードをより深く知るためのテキストを綴っています。
この記事はネタバレがございますので、「スター・ウォーズ:アコライト」第8話「アコライト」の本編鑑賞後にご覧ください。
「スター・ウォーズ:アコライト」の他のエピソードについては、以下のカテゴリーからご参照ください。
Disney+ (ディズニープラス)で配信中の「スター・ウォーズ:アコライト」のレビュー(感想・考察)、隠れ要素(イースターエッグ)やオマージュなどのトリビアの解説といった、エピソードをより深く知るためのテキストをまとめたエピソードガイドです。
「スター・ウォーズ:アコライト」第8話「アコライト」レビュー
因縁の地、ブレンドクに「アコライト」が現れる
「スター・ウォーズ:アコライト」最終話である第8話のエピソードタイトルは、シリーズタイトルと同名である「アコライト」。
ザ・ストレンジャーが語っていた「アコライト(侍者)なら武器を持たずに相手を殺せる」という意味と、このシリーズがあるキャラクターが「アコライト」になるまでを描いたものだということが、本エピソードでわかるようになっている。
前話である第7話「選択」で、16年前のブレンドクでの事件のこれまで描かれなかった部分を知った視聴者は、ソルのこれまでの振る舞いの理由や、メイの動機がよりわかるようになった。
ソル、メイ、オーシャとザ・ストレンジャーは、2人の故郷であり、別れ道となったブレンドクに集結。「フォースの集中」の証明のため、ソルが呼び寄せたヴァーネストラ・ロウが率いるコルサントのジェダイたちも追ってきて、ソルとザ・ストレンジャー、オーシャとメイは逃れられなかった過去とともに戦うことになる。
「スター・ウォーズ:アコライト」第8話「アコライト」ストーリー
ザ・ストレンジャーのヘルメットを被ったオーシャ。しかし、しばらくすると痙攣しはじめ、ザ・ストレンジャーはヘルメットを外そうとするも、ブレンドクの魔女であるマザー・アニセヤが使っていたビジョンに取り込まれる。現実では、ザ・ストレンジャーの目はかつてトービンがなったように黒くなってしまう。
なんとかヘルメットを外すと、オーシャはソルを殺そうと手を差し出したメイを見たという。メイはライトセーバーを持っていたが、それを使わなかったというのだ。
ザ・ストレンジャーはそれは未来の光景だといい、丸腰で殺せるのかとつぶやく。
未来は不確かだからまだ止められるというオーシャ。宇宙船を持つザ・ストレンジャーと、行き先がわかるオーシャは共にメイの元へ向かうことに。
ブレンドクの軌道上のポラン GX-8の船内でソルは、ヴァーネストラ・ロウとジェダイたちを呼び出し、メイとオーシャが生きているため「フォースの集中」を証明しようとしていると、拘束したメイに話していた。
メイがマザー・アニセヤを殺したことを正当化するのかと聞くと、ソルはあれは事故だと言う。そのことをオーシャに隠し、嘘をついて自分のせいにしたことを責めるメイ。それに対し、ソルはメイが火を放ったことを指摘すると、メイは侵略を受けたからだといい、ジェダイが皆を殺したのだと非難する。
ソルは介入は正しかったとし、一番の後悔は2人を救えなかったことだと言う。さらに、メイとオーシャは双子でも姉妹でもないと続けるが、会話の最中にピップを使って拘束を外したメイが、ソルをピップの電撃により攻撃。
脱出船で逃走したメイを、ソルはポラン GX-8で追跡。メイはブレンドクの衛星の小惑星帯に突入。後を追うソルはメイの脱出船を照準コンピュータで捉えようとするが、バジルは船内のワイヤーを抜いてしまう。コントロールが効かなくなったポラン GX-8は、メイが乗る脱出船に衝突。ブレンドクへと不時着する。
コルサントのジェダイ・テンプルの司令室では、ヴァーネストラ・ロウのもとにレイエンコート議員が訪れ、元老院に無断で捜査中の殺人について聞いていた。
当座は内輪で動こうとしており、大きな脅威がなければ権限内であるとするヴァーネストラ・ロウに、レイエンコート議員はなぜ脅威がないと言えるのかなど追求。さらに、外部審査を訴えているのは個人的な恨みからだと思っているのか尋ねると、ヴァーネストラ・ロウは率直に言えばとこれを認める。
レイエンコート議員は、ジェダイは絶対的な力を持つ巨大組織であり、コントロール不能なものをコントロール出来ると主張しているとする。それはフォースではなく、感情のことで、正しさと善良さと制御を打ち出しているが堕落する者は必ず現れるとし、もしもではなく、そうなった時に誰がそれを止めるだけの力を持っているのかと言う。
ヴァーネストラ・ロウはその意見は元老院の総意ではないと言い、レイエンコート議員は確かに大半はジェダイ肯定派だが、その理由は英雄を崇める者は、目の前の本質を見ないからだとする。
ヴァーネストラ・ロウは司令室の扉を開けて退出を促すと、レイエンコート議員は透明性の欠如をドレリク議長に報告しており、元老院法廷に呼ばれることになるという。
それまでに逮捕に至るといいがとし、「フォースとともにあらんことを」と皮肉を言い残して退出する。
出発の際、ザ・ストレンジャーはオーシャに訓練することを考えてくれたか尋ねるが、オーシャは改めてこれを断る。オーシャは姉とは違うと言い、ザ・ストレンジャーもメイは誘いに飛びついたと同意し、宇宙船エグザイルⅡは飛び立つ。
その様子を、ダース・プレイガスは岩陰から見ていた。
ブレンドクに到着したソルは、ポラン GX-8でトランスポンダー・ビーコンを入れてブレンドクの魔女たちがいた砦へと向かう。手をかざして歩んで行ったソルを、バジルはコックピットで見ていた。
コルサントでは、ヴァーネストラ・ロウが緊急で連絡する必要があることを何者かに通信していた。通信の相手は、極めて異例だが手を尽くすと答える。
そこにジェダイ・パダワンのモグ・アダナがトランスポンダー・ビーコンを再びオンにしたソルを見つけたと、ヴァーネストラ・ロウに知らせに来た。
ソルがブレンドクにいると聞いたヴァーネストラ・ロウは、宇宙船の準備とともに警戒されることなく集められるだけのジェダイ・ナイトを集めるようモグ・アダナに指示。戦いを予測しているか尋ねられると、ヴァーネストラ・ロウは解決を図ろうとしていると答える。
オーシャとザ・ストレンジャーが乗るエグザイルⅡもブレンドクに到着。オーシャはソルとメイがすでに到着していることも確認。ブレンドクの砦にいたソルも、上空のエグザイルⅡを確認した。メイを探すソルは、16年前の出来事を思い起こす。
オーシャとザ・ストレンジャーはブレンドクの砦の入り口にやって来た。エレベーターを動かすことが唯一の道であり、さもなければ壁を登るかだとオーシャは話すが、目を離した隙にザ・ストレンジャーは姿を消す。
16年前にオーシャが救われ、メイが落下した場所を再訪するソル。ソルが去った後、メイが這い上がってくる。そしてメイは、かつて自分たちが過ごした部屋を訪れるのだった。
ソルの前には、ザ・ストレンジャーが現れライトセーバーによる決闘が始まる。ザ・ストレンジャーはライトダガーも用いて、フォースを駆使した死闘が展開。
エレベーターを直して砦に侵入したオーシャはメイの元へ。メイがオーシャとジェダイを引き離そうとして全員死に絶えたとオーシャは言う。メイはソルが偽って責めたというが、オーシャはソルは一度も責めておらず、ただ愛する者に破滅させられ得ることを受け入れろと教えようとしてくれたが、ネガティブな感情を抑えられず、マザー・アニセヤの死を嘆き続け、メイを憎み、ジェダイになることが出来ず、結局メイの望みが叶ったのだという。
メイは、ソルがマザー・アニセヤを殺したことを明かす。ネガティブな感情を抱かせたのは、ソルだというのだ。
オーシャは激昂し、メイとの間で壮絶な格闘が始まった。
ブレンドクの上空には、ヴァーネストラ・ロウは乗る宇宙船が現れ、ソルとザ・ストレンジャー、オーシャとメイがそれぞれ気付く。
激しく斬り結んだ末、ソルはザ・ストレンジャーのライトセーバーを両断。ソルがライトセーバーを突き付ける中、メイが割って入ってライトセーバーを奪い取る。
ザ・ストレンジャーがメイの怒りを煽ろうとする中、メイはライトセーバーを投げ捨てて、ジェダイ最高評議会の前で罪を告白させ、元老院や共和国に向けて罪を償わせたいのだという。
ソルは2人を守ろうと正しいことをしたといい、メイに2人は双子ではなく同一の人間で、母親の魔術は不明だがブレンドクの「フォースの集中」と関係があるのだという。マザー・アニセヤはフォースを使ってメイとオーシャの命を創り出したことを、ソルは説明する。
メイはマザー・アニセヤを殺したことを追求し、ソルはこれを認める。それを聞いていたオーシャは、ソルに問いただす。ソルはオーシャを守ろうとしたもので、正しいことだったと釈明。ジェダイに秘密にした理由は、メイなしでは創られたという証拠がなく、オーシャに秘密にしたのは適齢を過ぎていたこともあって追放を防ぐためで、オーシャにとって最善を選んだという。もちろん何度も話そうとしたが、出来なかったと明かす。オーシャが夢見た人生が送れるように、オーシャのためにソルは話していなかったというが、突然ソルは話せなくなる。
オーシャがフォース・チョークをしたのだ。
オーシャが握っているライトセーバーのカイバー・クリスタルは露出し、次第に色が赤く変化していく。ソルはこれで良いと言い、息絶えた。
動揺するオーシャに手を差し伸べたザ・ストレンジャー。オーシャはザ・ストレンジャーにライトセーバーを起動して突き付けると、その光刃は青から赤へと変化していく。
ヴァーネストラ・ロウが率いるジェダイたちがブレンドクに到着。ヴァーネストラ・ロウはザ・ストレンジャーを察知し、生きていたかとつぶやく。急いでヘルメットを被るザ・ストレンジャー。
メイはオーシャと2人で、かつて自身が落下した場所まで行き、岩場を下ってコアトンネルへと到達。メイは落下した際、このコアトンネルに吸い込まれたと説明する。オーシャは彼女のリードに従います。
ヴァーネストラ・ロウが率いるジェダイたちは、ブレンドクの砦でソルの遺体を発見。ソルの遺体の前にいるヴァーネストラ・ロウを、ザ・ストレンジャーは見ていた。
オーシャとメイは、ブンタの木までたどり着く。お互いに信じなかったこと、火を放ったことを謝罪し合う2人。
そこにザ・ストレンジャーが現れてライトセーバーを奪い、もしオーシャの力がいかに強力か気付かれれば、マザー・アニセヤと同じ運命を辿ってしまうだろうと言う。
オーシャにどうすればと聞かれたメイは、どうしたいかと返す。オーシャはメイの代わりに、自分がザ・ストレンジャーの訓練を受けると言う。そうなると、ジェダイは追跡のため自分を使うだろうと言うメイに、ザ・ストレンジャーはオーシャと自身に関する記憶を消すことを試みられると告げる。
オーシャとメイは、どのような決断を下すのか…
平和と正義の守護者 、ジェダイの過ち
「スター・ウォーズ:アコライト」について、悪人にはそうなった理由があるとレスリー・ヘッドランドは語っている。
この「悪人」は、メイやザ・ストレンジャーを指しているものと思われたが、ソルやオーシャ、また他のジェダイたちも含まれるものとは、シリーズ配信開始当初は思っていなかった。
「スター・ウォーズ:アコライト」で語られたストーリーでは、平和と正義の守護者であるジェダイも間違えることがあるし、また正義よりもジェダイ・オーダーという組織を守るために行動してしまうということがあるということが大きく打ち出された。
ジェダイ黄金期のストーリーという触れ込みだったが、人間らしいジェダイの姿を見せることでこの後のジェダイ・オーダーの凋落のはじまりや、『最後のジェダイ(エピソード8)』でのルーク・スカイウォーカーの姿まで思い起こされるようだ。
ことの発端となったのは、小さな異端のコミュニティに対するファーストコンタクトだ。
銀河規模の政府に仕える大きな勢力であり、「正しい」とされるジェダイ・オーダーが、信じて研究するフォースを異なる形で解釈するフォース・カルトを発見し、未知のものへの恐怖と誤解(メイはマザー・アニセヤによる儀式のアセンションの説明を、ジェダイに誤ってより恐ろしげに伝えてしまっている)、そして個々人の中にある不安を解消し、願望を叶えるため、そのコミュニティと子どもたちの未来を壊してしまった。
外からブレンドクの魔女団の様子を見ただけで、オーシャとメイが儀式の犠牲になろうとしていると決めつけ、さらにまだパダワンがいない自身の願望のためにオーシャに愛着を抱き、その夢を利用しようとしたソル。
マザー・アニセヤを殺してしまったこと、そしてそのことを隠していたことでオーシャの怒りを買うが、状況としては次にどのような行動を取ろうとしていたかわからないマザー・アニセヤから身を守ろうとした結果ではあると思う。
さらに、オーシャとジェダイ評議会には事実の一部を伝えることで、ジェダイになるというオーシャの夢を守ろうとしたことは、ソル、インダーラとしてもその時点での最善ではあったと思う。
しかし、これを招いた土壌はソル自身の問題だ。
そうせざるを得ず、何度も言おうと思ったが言えなかったソルの贖罪が、第8話「アコライト」の終盤で描かれる。
トービンも正しいことをしていると思っていたが、自身の未熟さのためにジェダイと魔女団の衝突を誘発し、魔女団の壊滅に繋げてしまった。
ヴァーネストラ・ロウの暗躍と覚悟
「スター・ウォーズ:アコライト」では、シリーズを通してヴァーネストラ・ロウが政治の中で、ジェダイ・オーダーのあり方を疑問視する流れに抗う様子も描かれてきた。
第8話「アコライト」では、ついにヴァーネストラ・ロウの元にジェダイ・オーダーの不透明性を指摘し、今回の殺人事件を内々に処理しようとしている向きを疑問に思う、レイエンコート議員が直接対話にやって来る。
レイエンコート議員は、殺人事件を内輪だけで処理しようとする不透明性だけではなく、ジェダイは絶対的な力を持つ巨大組織で、コントロール不能な感情をコントロール出来ると主張し、必ず出るであろう堕落する者を止めることがジェダイに出来るのかも疑問視する。
これが指すのはつまり、元ジェダイで、さらにはヴァーネストラ・ロウの弟子であることが明らかになったザ・ストレンジャーのことであり、元ジェダイであったがザ・ストレンジャーの弟子となったオーシャのことでもあるし、遠い未来のアナキン・スカイウォーカーのことでもある。彼らは、議員が危惧する通りのコントロールが効かない危険な存在だ。
そして最終的にヴァーネストラ・ロウは、外部からの監査機関がないことを良いことにジェダイ・オーダーという組織を守るため、ブレンドクでの4人のジェダイの行いと、それに対するメイの復讐の顛末を、友であったソルにすべての罪を被せることで隠蔽してしまった。
ヴァーネストラ・ロウはソルに罪を負わせることで、政界からのジェダイへの不信の芽を摘み、ジェダイ・オーダーを生かし続けることを選んだわけだ。しかし、それは危機を先延ばしにしたに過ぎず、このあたりからかつてよりもジェダイが絶対的な存在ではなくなってしまったことは明白だ。
そして結果だけを見れば、レイエンコート議員の主張は正しい。
「スター・ウォーズ:アコライト」でヴァーネストラ・ロウが担ったのは、ジェダイ・オーダーが組織として硬直化し、プリクエル・トリロジーでの終焉に向かう端緒を描くことだ。
書籍シリーズ「スター・ウォーズ ハイ・リパブリック」を読んでいる方々にとっては、ヴァーネストラ・ロウがこのように組織を優先する老獪なジェダイとなってしまったことにギャップを感じるところもあるだろう。
一方で、ソルに罪を負わせるプロットを描き、銀河元老院の議員たち、またドレリク議長に対してもウソを突き通したヴァーネストラ・ロウの覚悟と胆力はこのキャラクターが背負うものの重みを表していると思う。
ザ・ストレンジャーは、背中の傷について斬ったのは自身を捨てた者だと明かしていた。自身を捨てた者とは、ヴァーネストラ・ロウのことなのか…ヴァーネストラ・ロウは「スター・ウォーズ:アコライト」によって、更なる拡がりを持つキャラクターとなったことは確かだろう。
「アコライト」 の道を選んだオーシャ、愛も憎しみも忘れたメイ
「スター・ウォーズ:アコライト」の最終話である第8話「アコライト」において、ハイライトとなるのはオーシャとメイの行く末だ。
お互いの師を入れ替えたことで光と闇が交差し、メイはジェダイのように復讐を捨てる考え方を持った末に、これまで暗い側面を担ってきたが怒りも悲しみも愛も忘れた存在となる。オーシャはソルによる決定的な罪の告白により、一転してダークサイドへと転向してしまう。
これを表すように、第8話「アコライト」においてオーシャは黒いローブを着るようになり、メイは引き続き白い民間人用のローブを身につけ、第6話「指導/堕落」から『スター・ウォーズ』シリーズらしい衣装演出が続いている。
オーシャの夢を守るため、マザー・アニセヤを殺してしまったことを隠したソルだったが、マザー・アニセヤはオーシャにとって周囲の反対がある中で、唯一夢を応援してくれた人だった。
これを正当化するソルの一言が、オーシャのダークサイド転向の最後の一押しとなってしまったわけだ。
オーシャが予見した未来はメイの光景だと思っていたが、それは自分自身の未来であった。『シスの復讐(エピソード3)』でアナキン・スカイウォーカーがパドメ・アミダラの死を避けようとするも自身がそのきっかけを作ってしまったことと同様に、未来予知を避けようとした結果、他ならぬ自分自身がその未来を実現させてしまうという皮肉なパターンの再来だ。
また、ライトセーバーを投げ捨ててソルへの復讐ではなく、罪の告白をさせようとするメイは『ジェダイの帰還(エピソード6)』でダース・ベイダーにとどめを刺すことを拒否したルーク・スカイウォーカーと同様の描写(直前でザ・ストレンジャーが怒りを煽るのは、パルパティーンのようだ)となっているほか、メイがブレンドクで生き延びたのは『帝国の逆襲(エピソード5)』でのベスピンのクラウド・シティのシャフトから落下したルーク・スカイウォーカーが助かった方法と同じくコアトンネルに吸い込まれたことなど、意図的に『スター・ウォーズ』のシーンをモチーフに取り入れて、『スター・ウォーズ』の特徴のひとつである「繰り返しの物語」としている。
第1話「失って/見つけて」では、アコライトは武器なしで殺せ、夢も殺せるとザ・ストレンジャーは言っていたが、それはダークサイドのフォース感知者がよく用いるフォース・チョークでジェダイを殺せるほどの強力なフォースと憎悪を持った者のことを指していたというわけだ。これこそが「アコライト」なのである。
さらに、その「アコライト」になった瞬間には、オーシャが握ったソルのライトセーバーが、剥き出しとなったクリスタルの部分が触れることで、血を流して赤く染まる!
かつて幼少の時、ソルがジェダイへの道へと誘い、握らせてくれたライトセーバーを血で染めてしまうのだ。
カイバー・クリスタルがダークサイドの持ち主によって支配され、血を流して赤く染まるその瞬間が実写で見られるとは!オーシャのダークサイドへの転向を印象付ける演出だ。
謎の後に残されたもの
シリーズ全体を振り返ると「スター・ウォーズ:アコライト」は、核心となる出来事について段階を踏んで、第3話「運命」と第7話「選択」で異なるふたつの視点から描き、16年前の過去と現在を行き来することでストーリーやキャラクターの心情描写に厚みを持たせるという、ドラマシリーズならではの構成だった。
「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」も、ボバ・フェットの夢という形で過去を解き明かしながらストーリーが語られていったが、これがボバ・フェット自身の回想であったことに対して、ブレンドクでの出来事についてオーシャとメイ、ソルをはじめとしたジェダイたちのそれぞれの認識の差が、視点を変えて語りなおすことで浮き彫りになる点が、これまでの『スター・ウォーズ』シリーズにはない作品である。
このことが、すでに発表されている作品とストーリー上の連続性がないシリーズでありながら、スカイウォーカー・サーガのような時を経ての喪失や悲しみ、贖罪といった重層的な味わいをもたらしたと思う。
随所に差し込まれたスカイウォーカー・サーガと似たシチュエーションやセリフは、ファンへの目配せだけではなく、繰り返しの物語である『スター・ウォーズ』らしさも表していたのではないだろうか。
このストーリーを表現した、アマンドラ・ステンバーグによるオーシャとメイの陰陽が入り乱れる1人二役に、心優しく、聡明で思いやりがあって強いジェダイであるが、止むに止まれず深い苦悩と罪を負ってしまったソルを演じたイ・ジョンジェの繊細な演技は見事で、人間ドラマが大きな見どころともなった。
しかし、オーシャとメイの容姿が同じである上に、その時々で2人がお互いに抱く感情は各エピソードごとに刻々と変化するものの、2人の間で最重要な出来事である16年前のブレンドクでの事件の真相は7話と終盤で明かされることから、構造上、その事件を経た感情のつながりがややわかりにくく、2人の感情の流れを視聴者が得られにくい向きもあったのではないかと思う。
アクションはジェダイ・オーダーと共和国が支配する時代であるだけあって、ライトセーバーとフォースを駆使した戦いがベースとなっているだけではなく、『大酔俠』や『グリーン・デスティニー』といった功夫映画の要素も取り入れ、ライトセーバーはもちろん、ライトセーバーやブラスターといった『スター・ウォーズ』おなじみの武器を用いないアクションシーンや、ワイヤーを用いたアクション演出も見ることが出来た。
『スター・ウォーズ』ではあるが宇宙は主に移動の場所に過ぎず、宇宙船同士のドッグファイトはないシリーズだが、第8話「アコライト」でのブレンドクの衛星の小惑星帯の間をすり抜けるビジュアルは美しく、新しいものがあった。
サスペンス、ミステリー仕立てのシリーズとして話題となったが、上記のようにオーシャとメイの感情の流れにわかりにくさがありつつも、謎が明らかになったからこそのドラマやキャラクターの魅力もある。
また、謎がすべて明らかになったわけではない。
オーシャとメイの出生については、ソルらブレンドクに赴いたジェダイたちの考えとしてはブレンドクの魔女の魔術と「フォースの集中」により、フォースを使って生命を創り出し、同一の人間を2人の意識に分けたというが、具体的にはどのような方法だったのか?
ソルはなぜ、友であるヴァーネストラ・ロウの弟子であるザ・ストレンジャーの顔を見てもわからなかったのか。ザ・ストレンジャーはソルのことを知っていたが、ソルは何かなじんだものを感じると述べるに止まっていた。
さらに、フォースの中でのソルの強さはオーシャのものというザ・ストレンジャーの言葉の意味は?
高潔でありながら腐敗しており、ロマンチックでありながら破滅的なエンディングを迎えた「スター・ウォーズ:アコライト」。アンビバレントなシリーズらしい締めくくりとなったが、上記の謎やヴァーネストラ・ロウとザ・ストレンジャーの関係については今後の作品で語られることを期待したい。
「スター・ウォーズ:アコライト」第8話「アコライト」トリビアチェックポイント
ポラン GX-8脱出船のヘルメット
メイがポラン GX-8の脱出船に搭乗する際のヘルメットには、反乱軍のシンボルマークの源流となるスターバードの紋章のようなデザインがある。
ドレリク議長
レイエンコート議員は、ヴァーネストラ・ロウに透明性の欠如をドレリク議長に報告したと言う。
このセリフから「スター・ウォーズ:アコライト」の時代における銀河元老院の議長はドレリク議長であることがわかり、終盤にはヴァーネストラ・ロウから事件の報告を聞くドレリク議長も登場する。
ドレリク議長はターサントであり、『フォースの覚醒(エピソード7)』での新共和国の銀河元老院議長であるラネヴァー・ヴィルチャムと同じ種族だ。
ダース・プレイガス
メイとザ・ストレンジャーが出発する様子を岩陰から見ている人物は、ムーンのようである。
ダークサイドに近しいムーンといえば、『シスの復讐(エピソード3)』でパルパティーンに言及されていたシスの暗黒卿のダース・プレイガスが連想される…
StarWars.comのデータバンクには、この人物はダース・プレイガスであること、またダース・シディアスの師であることが明確にされている!
パルパティーンがアナキン・スカイウォーカーに語ったところによれば、ダース・プレイガスはフォースを使ってミディ=クロリアンを操り、生命を作り出して死を遠ざけることすら出来たというが、最終的に弟子(ダース・シディアス=パルパティーン)によって滅ぼされた。
レジェンズの小説では、「スター・ウォーズ ダース・プレイガス」にてパルパティーンとともにそのストーリーが描かれていた。
ダース・プレイガスがザ・ストレンジャーのマスターであるのか、またはこの時点でザ・ストレンジャーとの関わりがないのか、といった他のキャラクターとの関係性は不明だ。
ダース・プレイガスがザ・ストレンジャーのマスターだとすると、自分の弟子が欲しいと語っていたザ・ストレンジャーの話も頷ける。シスは常に2人である2人の掟はあるが、ダークサイドの弟子は師も弟子も求めている。
フォースを使ってミディ=クロリアンを操り、生命を作り出したというダース・プレイガス。ザ・ストレンジャーが弟子にしたオーシャが、ブレンドクの魔女の魔術と「フォースの集中」によって、フォースを使って創り出した生命だとすると、ダース・プレイガスの研究はオーシャの影響も大きいのではと思われる。
ザ・ストレンジャーがメイを訓練したことにどこまでダース・プレイガスが関与しているのかはわからないが、ダース・プレイガスの最後のシスの弟子がパルパティーンであることを考えると、ザ・ストレンジャーとオーシャはダース・プレイガスに利用されてしまうのではと思える…
ショーランナーのレスリー・ヘッドランドは、「スター・ウォーズ:アコライト」のいずれの検討バージョンにおいても、終局にはダース・プレイガスが常に登場していたという。
またその実写化においては、ギレルモ・デル・トロの『クリムゾン・ピーク』の影響があったという。
『グリーン・デスティニー』
ブレンドクでのザ・ストレンジャーとソルの決闘での高所から飛び降りながらの戦いは、第1話「失って/見つけて」と同じく『グリーン・デスティニー』に敬意を表したものだ。
血を流すライトセーバーのカイバー・クリスタル
ソルにフォース・チョークをしたオーシャが握るソルのライトセーバーは、内部のカイバー・クリスタルが赤く染まる。
さらに、ソルを殺害したオーシャに手を差し伸べたザ・ストレンジャーにライトセーバーを起動して向けると、その光刃は青から赤へと変化していく。
ライトセーバーに用いられるカイバー・クリスタルは、本質的にフォースのライトサイドのエネルギーで満たされているものである。しかし、ダークサイドのフォース感知者はライトセーバーのカイバー・クリスタルを支配することができるのだが、その際にカイバー・クリスタルは血を流して赤く染まるのである。これがシスをはじめとしたダークサイドのフォース感知者が赤いライトセーバーを持っている理由だ。
カイバー・クリスタルは血を流すことは、小説「スター・ウォーズ アソーカ」にて設定された。実写では、「スター・ウォーズ:アコライト」が初めて描写することになった。
血を流したカイバー・クリスタルは、癒して浄化することで純白のライトセーバーとすることも可能だ。アソーカ・タノが使用しているライトセーバーがこれにあたる。
火葬
ヴァーネストラ・ロウは、亡きソルを薪を組んで火葬する。
この火葬は、『ジェダイの帰還(エピソード6)』でルーク・スカイウォーカーがアナキン・スカイウォーカーを火葬したシーンを思わせる。
ヨーダ
ラストシーンでヴァーネストラ・ロウが話をしに行ったマスターの後ろ姿は、明らかにヨーダのものだ!ヴァーネストラ・ロウは、ヨーダにザ・ストレンジャーが生存しているという話をしに行ったのだろうか。それとも…
「スター・ウォーズ:アコライト」はDisney+ (ディズニープラス)で配信中。
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